消防危第229号
平成19年10月4日
各都道府県消防防災主管部長
東京消防庁・各指定都市消防長 殿
消防庁危険物保安室長
特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の構造等に係る運用指針について
特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の構造等については、危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第3号。以下「17年改正省令」という。)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件(平成17年総務省告示第30号。以下「17年改正告示」という。)により技術基準を整備したところです。また、特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等については、「特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等について」(平成19年3月28日付け消防危第64号。以下「64号通知」という。)による運用をお願いしているところです。
この度、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号。以下「告示」という。)第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の浮き機能及び、同号ホに規定するマンホール(以下「マンホール」という。)について、下記第1及び第2のとおり運用指針を取りまとめました。
併せて、64号通知で示した溶接部以外の溶接部の溶接方法に係る指針について取りまとめたことから、64号通知の一部を下記第3のとおり改正することとしました。
貴職におかれましては、下記事項に十分留意の上、その運用に配慮されるとともに、各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知されるようお願いします。
なお、本運用指針の通知以前に、浮き屋根の改修に係る変更の許可等の申請書等が提出された特定屋外タンク貯蔵所については、下記の指針の第1及び第2を適用しないものであることを申し添えます。
記
第1 浮き屋根の浮き機能について
1 浮き機能の判断基準に関する事項
告示第4条の22第1号イに規定する「沈下しないものであること」とは、同号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水を計算し、貯蔵する危険物が、外周浮き部分の外リムと上板との交点を超えない状態をいうものであること。
2 計算方法に関する事項
一枚板構造の浮き屋根にあっては、告示第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水の計算は、別添1の方法により行うことができるものであること。
3 既設の特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修に関する事項
(1) 告示第4条の21の3に規定する既設の特定屋外貯蔵タンクで、告示第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水を計算した結果、貯蔵する危険物が外周浮き部分の外リムの上端を超えることとなるものについては、17年改正告示附則第3条の規定により、17年改正省令附則第3条第1号に定める日までに1の判断基準に適合するよう改修すること。
ただし、工事計画やタンク繰り等の特段の事情により同日までに改修を行うことが極めて困難と認められる場合は、同日を超えて初めてタンクの内部を開放する際に改修することとして差し支えないこと。
(2) 告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンク以外の既設の特定屋外貯蔵タンクで一枚板構造の浮き屋根を有するものは、今後行われる浮き屋根の大規模改修に併せて告示第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水を計算し、その結果、貯蔵する危険物が外周浮き部分の外リムの上端を超えることとなる場合に1の判断基準に適合するよう改修することで足りるものであること。この場合において、浮き屋根の大規模改修とは、概ね次の工事をいうものであること。
ア 浮き屋根の全面取り替え工事
イ 外周浮き部分の全面取り替え工事
ウ 外周浮き部分の上板全面を取り外すことを伴う工事
(3) 既設の二枚板構造の浮き屋根を有するタンクにあっては、全てのタンクで、1の判断基準に適合するものと考えられることから、浮き屋根の最大喫水の計算及び改修は必要ないこと。
4 その他
17年改正省令附則第3条第1号に定める計画の届出がなされていない告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンクのうち、1の判断基準に適合させるために改修が必要となるものについて、本通知後すみやかに当該届出が行われた場合は、17年改正省令附則第3条第1号に定める期日までに届出がなされたものとみなして差し支えないこと。
第2 マンホールのふたの液密構造について
1 液密構造の確認方法に関する事項
告示第4条の22第1号ホの規定により、マンホールのふたは、告示第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損による当該浮き屋根の傾斜状態又は同号ニに規定する水の滞留状態において危険物又は水(以下「危険物等」という。)に浸かる場合には、当該危険物等が室内に浸入しない措置が講じられた構造(以下「液密構造」という。)である必要があるが、液密構造であることの確認は別添2に示した方法により行うことができるものであること。
なお、マンホールのふたが危険物等に浸かるか否かは、有限要素法等の適切な方法を用いて浮き屋根のたわみ等を考慮した解析から得られる結果に基づいて判断されるべきものであるが、当該解析が行われず、マンホールのふたが危険物等に浸かるか否かが不明な場合には、当該マンホールのふたは液密構造とする必要があること。
また、マンホールのふたは、浮き部分の内部の点検等に支障をきたさないよう開閉操作が容易に行える構造であることが望ましいこと。
2 既設の特定屋外貯蔵タンクのマンホールの改修に関する事項
(1) 既設の一枚板構造の浮き屋根のマンホールのふたで、液密構造である必要があるものについては、17年改正告示附則第3条の規定により、17年改正省令附則第3条第1号に定める日までに別添2の確認方法による液密構造が確保されるよう改修すること。
ただし、工事計画やタンク繰り等の特段の事情により同日までに改修を行うことが極めて困難と認められる場合は、同日を超えて初めてタンクの内部を開放する際に改修することとして差し支えないこと。
(2) 既設の二枚板構造の浮き屋根のマンホールのふたは、告示第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損による当該浮き屋根の傾斜状態において、貯蔵する危険物に浸かるおそれが極めて小さいと考えられることから、この状態に対しての液密構造は必要ないと考えられること。
なお、同号ニに規定する水の滞留状態においてマンホールのふたが水に浸かる場合、当該マンホールのふたは、この状態に対しての液密構造が必要であることから、次にタンクの内部を開放する際に別添2の確認方法による液密構造が確保されるよう改修すること。
3 その他
17年改正省令附則第3条第1号に定める計画の届出がなされていない特定屋外貯蔵タンクのうち、別添2の確認方法による液密構造を確保するために改修が必要となるものについては、本通知後すみやかに当該届出が行われた場合は、17年改正省令附則第3条第1号に定める期日までに届出がなされたものとみなして差し支えないこと。
第3 既発通知の一部改正について
告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンクの、浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部及び浮き部分と当該浮き部分以外の部分との溶接部の改修方法については、64号通知の記1により、完全溶込み溶接と同等以上の溶接強度を有するものと認められる溶接方法が示されているが、この度64号通知で示した溶接部以外の溶接部の溶接方法に係る指針を取りまとめたことから、64号通知の記1を次のとおり改正することとしたこと。
1 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の22第1号ハに規定する溶接部の溶接方法
(1) 表1左欄に掲げる溶接部の溶接方法は、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号。以下「告示」という。)第4条の22第1号ハに規定する完全溶込み溶接と同等以上の溶接強度を有する溶接方法であると認められること。
なお、浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部において、ルート間隔が1.0mmを超えるものついては、両側連続すみ肉溶接とするなど溶接継手部の強度を確保できる方法とすること。
(2) 表1左欄に掲げた溶接部以外の溶接部は、表2に掲げる溶接方法により行うことができること。
表1
区分 |
告示第4条の20第2項第3号イからハまでに規定する区域に存する特定屋外貯蔵タンク |
その他の区域に存する特定屋外貯蔵タンク |
浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部 |
両側連続すみ肉溶接 |
両側連続すみ肉溶接 |
部分溶込み溶接(溶込み量:d≧t(dは溶込み量、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
部分溶込み溶接(溶込み量:d≧t(dは溶込み量、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
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片側断続溶接+片側連続すみ肉溶接 (片側連続すみ肉溶接のサイズの大きさ:S≧1.5×t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
片側断続溶接+片側連続すみ肉溶接 (片側連続すみ肉溶接のサイズの大きさ:S≧t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
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片側連続すみ肉溶接 (サイズの大きさ:S≧1.5×t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
片側連続すみ肉溶接 (サイズの大きさ:S≧t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
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浮き部分の内リムとコンプレッションリングとの溶接部 |
両側連続すみ肉溶接 |
両側連続すみ肉溶接 |
浮き部分と当該浮き部分以外の部分との溶接部 |
両側連続すみ肉溶接 |
両側連続すみ肉溶接 |
〇 最終確認版