消防危第64号

平成19年3月28日

改正:平成19年消防危第229号、平成19年消防危第242

各都道府県消防防災主管部長

東京消防庁・各指定都市消防長 殿

消防庁危険物保安室長

 

特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等について

 

やや長周期地震動の影響による特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の耐震機能確保については、平成15年十勝沖地震に伴い発生した浮き屋根式屋外タンク貯蔵所火災を受け、平成17114日付け危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第3)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件(平成17年総務告示第30)により、技術基準を整備したところです。

この度、平成17年度から開催した「やや長周期地震動に係る危険物施設の技術基準に対応した合理的改修方法の開発に関する調査検討会」において、危険物の規制に関する規則(以下「規則」という。)第20条の4第2項第3号に定める技術上の基準に適合しない浮き屋根に対する合理的な改修方法についての検討結果が提案されたことを踏まえ、特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等に係る指針を下記のとおり取りまとめました。

貴職におかれましては、下記事項に十分留意の上、その運用に配慮されるとともに、各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。

 

 

1 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の22第1号ハに規定する溶接部の溶接方法

(1) 表1左欄に掲げる溶接部の溶接方法は、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号。以下「告示」という。)第4条の22第1号ハに規定する完全溶込み溶接と同等以上の溶接強度を有する溶接方法であると認められること。

なお、浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部において、ルート間隔が1.0mmを超えるものついては、両側連続すみ肉溶接とするなど溶接継手部の強度を確保できる方法とすること。

(2) 表1左欄に掲げた溶接部以外の溶接部は、表2に掲げる溶接方法により行うことができること。

表1

区分

告示第4条の20第2項第3号イからハまでに規定する区域に存する特定屋外貯蔵タンク

その他の区域に存する特定屋外貯蔵タンク

浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部

両側連続すみ肉溶接

両側連続すみ肉溶接

部分溶込み溶接(溶込み量:d≧t(dは溶込み量、tは薄い方の鋼板の厚さ))

部分溶込み溶接(溶込み量:d≧t(dは溶込み量、tは薄い方の鋼板の厚さ))

片側断続溶接+片側連続すみ肉溶接

(片側連続すみ肉溶接のサイズの大きさ:S≧1.5×t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ))

片側断続溶接+片側連続すみ肉溶接

(片側連続すみ肉溶接のサイズの大きさ:S≧t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ))

片側連続すみ肉溶接

(サイズの大きさ:S≧1.5×t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ))

片側連続すみ肉溶接

(サイズの大きさ:S≧t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ))

浮き部分の内リムとコンプレッションリングとの溶接部

両側連続すみ肉溶接

両側連続すみ肉溶接

浮き部分と当該浮き部分以外の部分との溶接部

両側連続すみ肉溶接

両側連続すみ肉溶接

 

2 浮き屋根の改修

浮き屋根の浮き部分の改修については、次の事項に留意して実施することが望ましいこと。

(1) 規則第20条の4第2項第3号に規定する液面揺動により損傷を生じない構造を有する必要がある既設浮き屋根については、地域特性に応じた浮き屋根の耐震強度を計算する必要があるが、一般的には、告示第4条の20第2項第3号イからハまでに規定する区域に存する特定屋外貯蔵タンクの多くに耐震補強が必要と考えられること。

なお、これ以外の区域に存する特定屋外貯蔵タンクの既設浮き屋根については、液面揺動の影響が小さく、浮き屋根の耐震強度がおおむね確保されていることから、耐震補強を必要とするものは極めて少ないと考えられること。

(2) 浮き部分の合理的な改修方法としては、浮き部分の上板及び下板にL形鋼を周方向に設置する方法が考えられるが、必要な強度を確保できる方法であればこれ以外の方法により改修することも差し支えないこと。

なお、L形鋼(上下一組)の本数については、浮き部分の応力レベルに応じた形鋼による補強効果を計算する必要があるが、一般的には、告示第4条の20第2項第3号イ及びハに規定する区域においては、おおむね容量が3kLから6kLの特定屋外貯蔵タンクに2列程度、6kLを越えるものに3列以上必要と考えられ、告示第4条の20第2項第3号ロに規定する区域においては、容量によらず2列程度必要と考えられること。

 

3 デッキと浮き部分の接合部に係る強度

二次モードの影響によりデッキに生じる半径方向膜力に対するデッキと浮き部分の溶接継手部の強度については、

ア デッキの膜力は、デッキ外周端において半径方向仕切板及びトラス材(骨組)に向かって応力が伝達する傾向にあり、剛性の高い仕切板への応力集中が顕著であること

イ ローデッキ型浮き屋根(浮き部分の下板が直接デッキと接合されているタイプの浮き屋根)では浮き部分の下板に膜力が一様に伝達されやすいが、ハイデッキ型浮き屋根(浮き部分がコンプレッションリングを介してデッキと接合されているタイプの浮き屋根)の場合には、半径方向仕切板部への応力集中が顕著であることを踏まえ、ハイデッキ型浮き屋根については、応力集中を緩和するため、内リムの鋼板の厚さを増すことや、内リムに補強材を設置するなどの半径方向の応力の集中を分散させる対策を講じることが望ましいこと。

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