消防危第242号
平成19年10月19日
各都道府県消防防災主管部長
東京消防庁・各指定都市消防長 殿
消防庁危険物保安室長
特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の構造等に係る運用指針について
特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の構造等については、危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令第3号。以下「17年改正省令」という。)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件(平成17年総務省告示第30号。以下「17年改正告示」という。)により技術基準を整備したところです。また、特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等については、「特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等について」(平成19年3月28日付け消防危第64号。以下「64号通知」という。)による運用をお願いしているところです。
この度、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号。以下「告示」という。)第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の浮き機能及び、同号ホに規定するマンホール(以下「マンホール」という。)について、下記第1及び第2のとおり運用指針を取りまとめました。併せて、64号通知で示した溶接部以外の溶接部の溶接方法に係る指針について取りまとめたことから、64号通知の一部を下記第3のとおり改正することとしました。
貴職におかれましては、下記事項に十分留意の上、その運用に配慮されるとともに、各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知されるようお願いします。
なお、本運用指針の通知以前に、浮き屋根の改修に係る変更の許可等の申請書等が提出された特定屋外タンク貯蔵所については、下記の指針の第1及び第2を適用しないものであることを申し添えます。
記
第1 浮き屋根の浮き機能について
1 浮き機能の判断基準に関する事項
第4条の22第1号イに規定する「沈下しないものであること」とは、同号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水を計算し、貯蔵する危険物が、外周浮き部分の外リムと上板との交点を超えない状態をいうものであること。
2 計算方法に関する事項
一枚板構造の浮き屋根にあっては、第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水の計算は、別添1の方法により行うことができるものであること。
3 既設の特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修に関する事項
(1) 告示第4条の21の3に規定する既設の特定屋外貯蔵タンクで、第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損状態における当該浮き屋根の最大喫水を計算した結果、貯蔵する危険物が外周浮き部分の外リムの上端を超えることとなるものについては、17年改正告示附則第3条の規定により、17年改正省令附則第3条第1号に定める日までに1の判断基準に適合するよう改修すること。
ただし、工事計画やタンク繰り等の特段の事情により同日までに改修を行うことが極めて困難と認められる場合は、同日を超えて初めてタンクの内部を開放する際に改修することとして差し支えないこと。
(2) 告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンク以外の既設の特定屋外貯蔵タンクにあっては、浮き屋根の最大喫水の計算及び改修は必要ないこと。
4 その他
17年改正省令附則第3条第1号に定める計画の届出がなされていない告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンクのうち、1の判断基準に適合させるために改修が必要となるものについて、本通知後すみやかに当該届出が行われた場合は、17年改正省令附則第3条第1号に定める期日までに届出がなされたものとみなして差し支えないこと。
第2 マンホールのふたの液密構造について
1 液密構造の確認方法に関する事項
告示第4条の22第1号ホの規定により、マンホールのふたは、第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損による当該浮き屋根の傾斜状態又は同号ニに規定する水の滞留状態において危険物又は水(以下「危険物等」という。)に浸かる場合には、当該危険物等が室内に浸入しない措置が講じられた構造(以下「液密構造」という。)である必要があるが、液密構造であることの確認は別添2に示した方法により行うことができるものであること。
なお、一枚板構造の浮き屋根にあっては、マンホールのふたが第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損による当該浮き屋根の傾斜状態において危険物等に浸かるか否かは、有限要素法等の適切な方法を用いて浮き屋根のたわみ等を考慮した解析から得られる結果に基づいて判断されるべきものであるが、当該解析が行われず、マンホールのふたが危険物等に浸かるか否かが不明な場合には、当該マンホールのふたは液密構造とする必要があること。
また、マンホールのふたは、浮き部分の内部の点検等に支障をきたさないよう開閉操作が容易に行える構造であることが望ましいこと。
2 既設の特定屋外貯蔵タンクのマンホールの改修に関する事項
(1) 既設の一枚板構造の浮き屋根のマンホールのふたで、液密構造である必要があるものについては、17年改正告示附則第3条の規定により、17年改正省令附則第3条第1号に定める日までに別添2の確認方法による液密構造が確保されるよう改修すること。
ただし、工事計画やタンク繰り等の特段の事情により同日までに改修を行うことが極めて困難と認められる場合は、同日を超えて初めてタンクの内部を開放する際に改修することとして差し支えないこと。
(2) 既設の二枚板構造の浮き屋根のマンホールのふたは、第4条の22第1号イに規定する浮き屋根の破損による当該浮き屋根の傾斜状態において、貯蔵する危険物に浸かるおそれが極めて小さいと考えられることから、この状態に対しての液密構造は必要ないと考えられること。
3 その他
17年改正省令附則第3条第1号に定める計画の届出がなされていない特定屋外貯蔵タンクのうち、別添2の確認方法による液密構造を確保するために改修が必要となるものについては、本通知後すみやかに当該届出が行われた場合は、17年改正省令附則第3条第1号に定める期日までに届出がなされたものとみなして差し支えないこと。
第3 既発通知の一部改正について
告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンクの、浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部及び浮き部分と当該浮き部分以外の部分との溶接部の改修方法については、64号通知の記1により、完全溶込み溶接と同等以上の溶接強度を有するものと認められる溶接方法が示されているが、この度64号通知で示した溶接部以外の溶接部の溶接方法に係る指針を取りまとめたことから、64号通知の記1を次のとおり改正することとしたこと。<改正後の64号通知>
1 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の22第1号ハに規定する溶接部の溶接方法
(1) 表1左欄に掲げる溶接部の溶接方法は、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号。以下「告示」という。)告示第4条の22第1号ハに規定する完全溶込み溶接と同等以上の溶接強度を有する溶接方法であると認められること。
なお、浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部において、ルート間隔が1.0㎜を超えるものついては、両側連続すみ肉溶接とするなど溶接継手部の強度を確保できる方法とすること。
(2) 表1左欄に掲げた溶接部以外の溶接部は、表2に掲げる溶接方法により行うことができること。
表1
区分 |
告示第4条の20第2項第3号イからハまでに規定する区域に存する特定屋外貯蔵タンク |
その他の区域に存する特定屋外貯蔵タンク |
浮き部分の内・外リムと上板又は下板との溶接部 |
両側連続すみ肉溶接 |
両側連続すみ肉溶接 |
部分溶込み溶接 (溶込み量:d≧t(dは溶込み量、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
部分溶込み溶接 (溶込み量:d≧t(dは溶込み量、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
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片側断続溶接+片側連続すみ肉溶接 (片側連続すみ肉溶接のサイズの大きさ:S≧1.5×t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
片側断続溶接+片側連続すみ肉溶接 (片側連続すみ肉溶接のサイズの大きさ:S≧t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
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片側連続すみ肉溶接 (サイズの大きさ:S≧1.5×t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
片側連続すみ肉溶接 (サイズの大きさ:S≧t(Sはサイズ、tは薄い方の鋼板の厚さ)) |
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浮き部分の内リムとコンプレッションリングとの溶接部 |
両側連続すみ肉溶接 |
両側連続すみ肉溶接 |
浮き部分と当該浮き部分以外の部分との溶接部 |
両側連続すみ肉溶接 |
両側連続すみ肉溶接 |
表2
溶接部 |
溶接方法 |
①浮き部分の内リム相互の溶接部 ②浮き部分の外リム相互の溶接部 ③浮き部分のコンプレッションリング相互の溶接部 |
完全溶込み溶接〔注〕 |
④浮き部分の上板相互又は下板相互の溶接部 ⑤浮き部分と仕切り板との溶接部 |
片側連続すみ肉溶接又はこれと同等以上の溶接強度を有する溶接 |
⑥浮き部分と補強材との溶接部 |
片側断続溶接又はこれと同等以上の溶接強度を有する溶接 |
注:当該部位が、I型開先による溶接の場合は、完全溶込み溶接とみなすことはできない。ただし、板厚が5㎜未満の場合でかつ両側から溶接されている場合は、I型開先であっても完全溶込み溶接とみなして差し支えない。
浮き屋根の最大喫水を求めるための計算方法
浮き屋根の室の破損時における浮き屋根の最終平衡状態は、外周浮き部分の室の破損によって生じる浮力損失に伴う一様沈下量と、破損した室の位置による傾斜モーメントの発生に伴う傾斜量を算出し、これらの和を最大喫水とする。
貯蔵する危険物が、浮き屋根の外周浮き部分の外リムと上板との交点を超えない必要があることから、以下に掲げる方法による計算の結果、H≧h1+h2+h3+hdでなければならない。
H 外周浮き部分の下板から外リムと上板との交点までの高さ(m)
h1 デッキ取り付け位置から一様沈下喫水線までの高さ
h2 上図のとおり
h3 傾斜量(m)
hd 上図のとおり
Wroof 浮き屋根の総重量(kN)
n 総室数
nB 破損室数
(回転止め、検尺管等が貫通している室(以下「貫通室」という。)の破損数を含む)
ρ 危険物の比重(告示第4条の22第1号ロによる)
g 重力加速度、9.80665(m/sec2)
R0 外周浮き部分の外リム半径(m)
Ri 外周浮き部分の内リム半径(m)
V4 デッキ取り付け位置から下部のポンツーン容積(?)
以上より、デッキ取り付け位置から一様沈下喫水線までの高さは、
となる。
θ デッキの傾斜角(rad)
y デッキの中心から浮力中心までの距離(m)
(1) 告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根において、連続する3の室に加えて貫通室及び当該浮き屋根の浮き部分以外の部分が破損した場合の傾斜量h3
ア 貫通室が一つある場合
この場合、下図に示す片側4室連続破損状態が最も傾斜が大きくなり、この時の傾斜量h3は下記の計算により求めることができる。
破損部のなす角
破損部の重心距離
破損部の水線面積
外周浮き部分の全水線面積
破損室に浸入する危険物の重量
デッキの中心から浮力中心までの距離
傾斜中心軸に関する水線面の二次モーメント
排水容積
メタセンタ高さ
デッキの傾斜角
傾斜量
イ 貫通室が二つある場合
この場合、一般的には、下図に示す貫通室2室と3室連続破損部が直交する場合に最も傾斜が大きくなり、この時の傾斜量は下記の計算により求めることができる。
傾斜に寄与する破損部のなす角
傾斜に寄与する破損部の重心距離
傾斜に寄与する破損部の水線面積
外周浮き部分の全水線面積
傾斜に寄与する破損室に浸入する危険物の重量
デッキの中心から浮力中心までの距離
傾斜中心軸に関する水線面の二次モーメント
排水容積
メタセンタ高さ
デッキの傾斜角
傾斜量
(2) 告示第4条の21の3に規定する特定屋外貯蔵タンク以外の特定屋外貯蔵タンクの一枚板構造の浮き屋根において、相隣接する2の室及び当該浮き屋根の浮き部分以外の部分が破損した場合の傾斜量h3
この場合の傾斜量h3は、(1)アの計算式において破損室数nBを2とすることにより求めることができる。
液密構造の確認方法
1 マンホールのふたの型式ごとに、次の確認試験を実施し、合格していること。
(1) 確認試験方法
ア マンホールの外側に外筒を設ける。
イ マンホールネックの上端から300mm以上の高さまで水を注入する。
ウ イの状態で2分間以上保持する。
(例図)
(2) 判定基準
目視でマンホールの内部を確認し、水の漏れのない場合を合格とする。
(3) 注意事項
既設の浮き屋根上で確認試験を実施すると、浮き屋根の一部に集中荷重(水荷重)を負荷することになり、浮き屋根の構造に悪影響を及ぼすおそれがあることから、確認試験は、工場等において実施することが望ましいこと。
2 市町村長等は、事業者等の試験実施結果書を確認することにより、液密構造であることの確認を行うことができるものであること。