消防危第197号

平成24年8月21日

各都道府県消防防災主管部長

東京消防庁・各指定都市消防長 殿

消防庁危険物保安室長

 

危険物施設の地震・津波対策に係る予防規程の策定について

 

東日本大震災における危険物施設の被害事例に照らした地震・津波対策については、「東日本大震災を踏まえた危険物施設の地震・津波対策の推進について」(平成24年1月31日付け消防危第28)によりお願いしているところです。

今般、危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成24年総務省令第49)により、危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第11の2号が改正され、予防規程に定めなければならない事項に、地震が発生した場合に加え、地震に伴う津波が発生し、又は発生するおそれがある場合における施設及び設備に対する点検、応急措置等に関することが追加されたことを踏まえ、当該事項として予防規程に盛り込むべき主な事項等を下記の通り取りまとめましたので、通知します。

貴職におかれましては、このことに留意され、引き続き適切な運用をお願いするとともに、貴管内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知されるようお願いします。

なお、本通知は消防組織法(昭和22年法律第226)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。

 

 

第1 険物施設に共通する津波対策

1 津波対策を記載する必要がある製造所等

今回追加された事項については、地方公共団体等が作成する津波浸水想定区域図等において、津波による浸水が想定された地域に所在する製造所等の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)が定める予防規程に記載すること。

なお、地方公共団体等において津波浸水想定区域図等が見直された場合は、対象となる製造所等についてもその都度見直すこと。

2 予防規程に盛り込むべき主な事項

地震に伴う津波が発生し、又は発生するおそれがある場合における施設及び設備に対する点検、応急措置等に関する事項として予防規程に盛り込むべき主な事項は以下のとおりであること。

なお、予防規程の策定に当たっては、製造所等の実態に即して必要な対策を具体化しながらこれを明確に規定するよう作業を進めることが重要である。

また、その詳細を予防規程とは別のマニュアルに記載し、予防規程の中で当該マニュアルを引用することも可能であること。

(1) 従業員等への連絡方法

設備の破損、停電、浸水等により通常使用している通信機器等が使用できない場合も考慮した上、津波警報が発令されたことや津波が発生するおそれのある状況であることを、津波襲来の切迫性も含めて従業員等へ伝達する方法

(2) 従業員等の安全確保等に係る対応

地盤の液状化、構造物の破損、収容人員等を考慮した従業員等の避難経路、避難場所、避難方法等

(3) 施設の緊急停止の方法、手順等

ア 設備の破損、停電、浸水が発生した場合の対応

イ 津波襲来までの時間に応じた対応

ウ 施設の緊急停止に伴い危険物を取り扱う装置等での異常反応や圧力上昇等により火災流出等の事故が発生することがないよう、施設における危険物の貯蔵・取扱いの工程(プロセス)に応じた対応

エ 緊急停止に係る設備機能が作動しない又は操作できない場合の対応

(4) 施設の緊急停止等の実施体制

ア 緊急停止等に対応できる時間が限られていることを考慮した、短時間で効果的に行うための判断基準、権限及び従業員の役割

イ 夜間や休日など、従業員等の少ない時間帯における実施体制

(5) 従業員への教育及び訓練

(1)から(4)までについての従業員への教育及び定期的な訓練

(6) 入構者に対する周知

従業員以外の入構者に対する避難に係る事項の周知

3 その他

大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73)第3条第1項の規定により地震防災対策強化地域として指定された地域、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年法律第92)第3条第1項の規定により東南海・南海地震防災対策推進地域として指定された地域又は日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成16年法律第27)第3条第1項の規定により日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域として指定された地域に所在する製造所等の所有者等が定める予防規程についても、2の内容について改めて確認を行うとともに、必要に応じて予防規程の変更について検討すること。

 

第2 屋外タンク貯蔵所に係る津波対策

1 津波被害シミュレーションの実施

津波による屋外貯蔵タンクの被害形態は、津波浸水深、タンクの自重、タンクの内径、貯蔵危険物の重量等の状況により異なることから、屋外タンク貯蔵所の所有者等は、それぞれの状況を踏まえ具体的な被害予測を行った上で、屋外タンク貯蔵所の津波対策に関する事項について予防規程に定める必要があること。この被害予測の実施に当たっては、消防庁ホームページにおいて提供している屋外貯蔵タンクの津波被害シミュレーションツールを活用すること。当該ツールの使用方法については、「屋外貯蔵タンクの津波被害シミュレーションツールの提供について」(平成24年8月1日付け消防危第184)の別添「屋外貯蔵タンクの津波被害シミュレーションツールに係る利用マニュアル」を参照すること。

2 予防規程に盛り込むべき事項

東日本大震災による屋外タンク貯蔵所の被害事例を分析した結果、タンク底板から3m以上の津波浸水被害を受けた屋外貯蔵タンクの付属配管の多くが破損したことが明らかとなったことから、予防規程には第1、2の内容に加え、以下の項目を盛り込むこと。

(1) 特定屋外タンク貯蔵所

津波により特定屋外貯蔵タンクの付属配管が破損した場合は、タンク内に貯蔵された危険物が配管の破損箇所から流出するおそれが高いことから、タンク底板から3m以上の津波浸水が想定された特定屋外貯蔵タンクにあっては、配管を通じた当該タンクからの危険物の流出を防止する措置について予防規程に定める必要があること。

当該措置については、以下のいずれかによることが適当である。

ア 津波が到達する時間及び従業員等の避難を考慮した上で、休日・夜間を問わずに従業員がタンク元弁を手動で閉止できる体制を構築すること。この場合においては、従業員等への連絡方法、弁の閉止作業に伴う他の施設への影響及び弁の閉止に要する時間等について具体的な検討が必要であること。

イ 配管とタンクとの結合部分の直近に予備動力源が確保された遠隔操作によって閉鎖する機能を有する弁(緊急遮断弁等)を設置すること。

この場合においては、従業員等への連絡方法、弁の閉止作業に伴う他の施設への影響及び弁の閉止に要する時間等について具体的な検討が必要であるとともに、地震時における予備動力源の信頼性について十分な検討が必要であること。

なお、配管とタンクとの結合部分の直近にタンク内の危険物が配管に逆流することを防止する弁(逆止弁)が設けられている場合や、屋外貯蔵タンクの屋根上から危険物の受入れ及び払出しを行う等配管が最高液面高さよりも上部に設けられている場合のように、津波により配管が破損した場合においても、タンクに貯蔵された危険物が当該破損箇所から流出するおそれがない場合については、ア及びイの対策は不要であること。

また、津波浸水の想定がタンク底板から3m未満となる特定屋外貯蔵タンクにあっては、津波により配管が破損するおそれが低いことから、危険物の流出を最小限にとどめることは必要であるものの、原則として上記ア及びイの対策までは要しないものであること。

(2) 特定屋外タンク貯蔵所以外の屋外タンク貯蔵所

容量が1,000kL未満の屋外貯蔵タンクにあっては、津波によりタンク本体が移動等の被害を受けるおそれが高いことから、所有者等は、津波被害シミュレーションの結果を踏まえ、可能な限り危険物の流出を最小限にとどめるための具体的な対策について検証を行い、予防規程に定めること。

 

【参考】

○大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73)第3条第1項

平成2352日法律第37号改正(平成24827日確認)

(地震防災対策強化地域の指定等)

第3条 内閣総理大臣は、大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと認められる地殻内において大規模な地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)として指定するものとする。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による強化地域の指定をしようとするときは、あらかじめ中央防災会議に諮問しなければならない。

3 内閣総理大臣は、第1項の規定による強化地域の指定をしようとするときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。この場合において、関係都道府県知事が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村長の意見を聴かなければならない。

4 内閣総理大臣は、第1項の規定による強化地域の指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。

5 前3項の規定は、内閣総理大臣が第1項の規定による強化地域の指定の解除をする場合に準用する。

 

○東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年法律第92)第3条第1項

平成23830日法律第105号改正(平成24827日確認)

(東南海・南海地震防災対策推進地域の指定等)

第3条 内閣総理大臣は、東南海・南海地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、東南海・南海地震防災対策推進地域(以下「推進地域」という。)として指定するものとする。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による推進地域の指定をしようとするときは、あらかじめ中央防災会議に諮問しなければならない。

3 内閣総理大臣は、第1項の規定による推進地域の指定をしようとするときは、あらかじめ関係都府県の意見を聴かなければならない。この場合において、関係都府県が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村の意見を聴かなければならない。

4 内閣総理大臣は、第1項の規定による推進地域の指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。

5 前3項の規定は、内閣総理大臣が第1項の規定による推進地域の指定の解除をする場合に準用する。

 

○日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成16年法律第27)第3条第1項

平成1642日公布(平成24827日確認)

(日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域の指定等)

第3条 内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域(以下「推進地域」という。)として指定するものとする。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による推進地域の指定をしようとするときは、あらかじめ中央防災会議に諮問しなければならない。

3 内閣総理大臣は、第1項の規定による推進地域の指定をしようとするときは、あらかじめ関係都道県の意見を聴かなければならない。この場合において、関係都道県が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村の意見を聴かなければならない。

4 内閣総理大臣は、第1項の規定による推進地域の指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。

5 前3項の規定は、内閣総理大臣が第1項の規定による推進地域の指定の解除をする場合に準用する。

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