消防予第101号
昭和60年9月10日
改正 平成13年消防予第103号・消防危第53号
各都道府県消防主管部長 殿
消防庁予防救急課長
改正火災予防条例準則の運用について(通知)
標記準則については、さきに「火災予防条例準則の一部改正について」(昭和60年9月10日付け消防予第100号消防庁次長通知)をもつて示したところであるが、その運用については下記事項に留意の上、適正を期するよう貴管下市町村を御指導願いたい。
記
第1 改正後の火災予防条例準則(以下「改正準則」という。)第13条第2項及び第14条第2項に基づく蓄電池設備及びネオン管灯設備の管理の基準について
1 蓄電池設備及びネオン管灯設備の管理については、変電設備と同様に、火災予防上必要な点検及び試験の実施並びに不良箇所の補修を熟練者に行わせることとするほか、その結果を記録し、かつ、保存させることとするものであること。
なお、この改正は、蓄電池設備については最新の充電装置及び逆変換装置が高度にエレクトロニクス化されつつあり、点検及び整備に当たつて高度な技術を必要とするようになつてきたこと、またネオン管灯設備については高電圧で使用される設備であることに加え、最近デイスコ等の遊技場における屋内装飾としての設置が増えていること等、これら設備の保守管理の不良が重大な火災発生の危険に結びつくおそれがあるので、事前の措置の徹底を図ろうとするものであること。
2 削除
第2 改正準則第17条の3及び第22条の2に基づく基準の特例について
火災予防条例準則第17条の3及び第22条の2の特例の基準は、従来、火を使用する設備及びその使用に際し火災の発生のおそれのある設備にあつてはその位置、構造及び管理並びに周囲の状況、火を使用する器具及びその使用に際し火災の発生のおそれのある器具にあつてはその取扱い及び周囲の状況からそれぞれ総合的に判断して当該規定の適用ができることとされていたが、技術開発により出現する特殊の設備及び器具についても火災予防上支障がないものについては同様の扱いができるものとしたものであること。
第3 改正準則第45条の2に基づく指定洞道等の届出について
1 本条の規定は、指定洞道等について消防機関があらかじめ必要な事項を把握するとともに、関係者に対しその火災に対する適切な安全管理対策の指導を行うことにより、洞道等における防火安全を期することを目的とするものであること。
2 本条第1項に定める通信ケーブル等の洞道、共同溝その他これらに類する地下の工作物で、火災が発生した場合に消火活動に重大な支障を生ずるおそれのあるものには、通信ケーブルの敷設を目的として設置された洞道、電力ケーブルの敷設を目的として設置された洞道及び通信ケーブル等の敷設を目的として設置された共同溝が該当すること。
3 第1項第1号に規定する「指定洞道等の経路及び出入口、換気口等の位置」は、経路図に記載すること(別添1参照)。
4 第1項第2号に規定する「主要な物件」には、敷設ケーブル、消火設備、電気設備、換気設備、連絡電話設備等が該当し、これらの概要が記されていれば足りること(別添2参照)。
5 第1項第3号に規定する「安全管理対策」は、次に掲げる事項が明らかとされているものであること。
(1) 指定洞道等の内部に敷設されている通信ケーブル等の難燃措置に関すること。
なお、通信ケーブル等の難燃措置に関して、別紙1の難燃特性を有するケーブル又はケーブル被覆材を用いている場合は、その旨記載させること。
(2) 指定洞道等の内部において火気を使用する工事又は作業を行う場合の火気管理等の出火防止に関すること。
(3) 火災発生時における延焼拡大防止、早期発見、初期消火、通報連絡、避難、消防隊への情報提供等に関すること。
(4) 職員の教育及び訓練に関すること。
6 第2項に規定する「重要な変更」とは、指定洞道等の経路の変更、出入口、換気口等の新設又は撤去、通信ケーブル等の難燃措置の実施又はその変更その他安全管理対策の大幅な変更等をいうものであること。
7 既存の洞道等に係る届出は、指定洞道等として消防長(消防署長)が指定する際に関係者に周知徹底を図り、遅滞なく届出が行われるよう指導すること。
8 届出の様式については、別記様式によることが適当と認められること。
第4 その他参考事項
洞道等に敷設される通信ケーブル及び電力ケーブルについては、その火災に対する安全対策の推進について日本電信電話株式会社及び電気事業連合会それぞれからの照会に対し回答している(別添3参照)ので承知されたい。
なお、照会に係る通信ケーブル及び電力ケーブルの被覆材及びケーブルは、別紙1の難燃特性を有するものである。
敷設物件とその概要
敷設物件 |
概要 |
通信用ケーブル |
難燃シートでカバーされている。 難燃ケーブルが敷設されている。 |
電気設備 |
洞道内の照明及び他の施設の電源となつている。 |
排水設備 |
排水ポンプにより洞道外に排水する。 |
換気設備 |
送風機により洞道内を換気する。 |
防水設備 |
換気口に防水設備を設置している。 |
金物設備 |
金物によりケーブルを支持し、又は、作業台、階段等を設置している。 |
連絡電話設備 |
洞道内における相互の連絡及び外部との連絡用に設置されている。 |
消火設備 |
洞道内の出入口の近傍に消火器を常備している。 |
火災対策用通信ケーブル及び被覆材について
昭和60年4月10日
日本電信電話株式会社から照会
昭和60年4月17日
消防庁予防救急課長回答
(照会)
拝啓 陽春の候、貴殿ますます御清栄のこととお喜び申し上げます。
日頃、電信電話事業につきましては、格別の御協力を賜り厚くお礼申し上げます。
また、先般の世田谷局とう道内ケーブル火災事故に際しましては、多大な御指導を賜り誠にありがとうございました。
さて、弊社といたしましては、別添(略)の通信用ケーブル及び被覆材を導入し、火災の再発防止に努める所存でございますが、グループケーブルの火災に対する安全確保の観点から、その妥当性について御指導を賜わりたく照会いたします。
(回答)
照会のあつた難燃化ケーブル及び難燃性被覆材の導入については、その燃焼性、燃焼ガスの発生性及び発煙性からみて、洞道等に敷設されるグループケーブルの火災に対する安全確保の充実対策として適切な措置であると認められます。
電力用ケーブルならびに被覆材の難燃性に係わる意見照会について
昭和60年8月1日
電気事業連合会から照会
昭和60年8月6日
消防庁予防救急課長回答
(照会)
拝啓 盛夏の候、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は、当連合会業務に対しましてご理解賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、電気事業者といたしましては先の電電公社洞道内ケーブル火災に鑑み、電力用規格に基づく既設ケーブルの燃焼試験を、電事連大における代表2社(東京電力、関西電力)により実施し、難燃性の確認を致しております。今後共、電気事業者が使用する洞道内電力ケーブルの難燃性品質を維持管理するために、別添の案により洞道内電力用ケーブル(外径30mm以上)ならびに被覆材の難燃性に係わる仕様を定める予定であります。
つきましては、洞道内グループケーブルの火災に対する安全確保の観点から、この仕様が適当であるかどうかについて、消防技術の専門的な貴職よりご意見を賜りますようお願い致します。
敬具
<添付資料>(略)
1.電力用ケーブルならびに被覆材の難燃性に係わる仕様(案)
2.既設ケーブルに関する燃焼試験報告
(回答)
照会のあつた電力ケーブルならびに被覆材の難燃性に係わる仕様(案)については、その燃焼性、燃焼ガスの発生性及び発煙性からみて、洞道等に敷設されるグループケーブルの火災に対する安全確保の向上策として適切であると認められる。
ケーブル及びケーブル被覆材の難燃特性
1 燃焼性
燃焼性については、米国電気電子学会(Institute of Electrical and Electronics Engineers、略称IEEE)の規格383に適合するもの
2 発煙濃度
発煙濃度については、米国基準局(National Bureau of Standard、略称NBS)の発煙濃度試験法(American Society for Testing and Materials、略称ASTMの規格E662)により測定された濃度が400以下のもの
3 ハロゲン化水素発生量
ハロゲン化水素発生量については、ハロゲン化水素(ふつ化水素を除く)発生量が350mg/g以下で、かつ、ふつ化水素発生量が200mg/g以下のもの
なお、上記難燃特性に関する試験方法等については、別紙2の資料を参照されたい。
「ケーブル及びケーブル被覆材の難燃特性に関する試験方法」
第1 燃焼性の試験
燃焼性の試験は、次に掲げるところによる。
1 試験試料
試料は、燃焼防止被覆材にあつては基準ケーブル(外径が30mm以上50mm未満、長さ2400mmのケーブルをいう。以下同じ。)に当該被覆材について定められた方法により被覆材を被覆したものを、難燃性ケーブルにあつては基準ケーブルを、2回の燃焼試験に必要な本数とする。
2 試験装置
試験装置は、試料取付け部及び試料燃焼部からなる燃焼試験装置とする。
(1) 試料取付け部は、別図第1に示す形状及び寸法を有するものとする。
(2) 試料燃焼部は、次のとおりとする。
ア バーナーは、おおむね別図第2に示す形状及び寸法を有するものとする。
イ 燃焼ガスは、日本工業規格(以下「JIS」という。)K2240の液化石油ガス2種1号に適合するものとする。
3 試験方法
(1) 試料をその直径の2分の1の間隔を保つて並べ、当該並べ幅が150mm以上で、かつ、試料取付け部からはみ出さないように試料取付け部の中央に固定すること。
(2) バーナーを床面からバーナー口下部までの高さ600mm、試料前表面からバーナー口までの水平距離75mmの位置に水平に設置して点火し、20分間火炎を出し続けること。この場合において、火炎はその長さが380mm以下とならないもので、かつ、バーナー口から火炎長の方向に72mmの火炎の中点における温度がJIS C1602の熱電対による測定値で815℃以下とならないようにする。
(3) バーナー点火開始20分後にバーナーの火炎を消し、試料の着火炎が消えるまで観察する。
4 試験結果
2回の試験の結果、いずれも試料の上端まで燃焼せず又は1回目の試験の結果、燃焼の長さがケーブルの下端から1500mm未満であること。
第2 発煙性の試験
発煙性の試験は、次に掲げるところによる。
1 試験試料
試料は、燃焼防止被覆材にあつてはその素材(燃焼防止被覆材が2以上の素材の張り合わせにより造られているもの(以下「複合被覆材」という。)であるときは、当該複合被覆材を構成する素材のうち最も発煙性を有するもの)を、難燃性ケーブルにあつてはそのケーブル素材を、縦76mm、横76mm、厚さ0.5mm±0.1mmに裁断したものを5個とする。
2 試験装置
試験装置は、試料加熱部及び煙濃度測定部からなる密閉燃焼試験装置(別図第3)とする。
(1) 試料加熱部は、次のとおりとする。
ア 試験箱は、幅、奥行き及び高さの内寸法がそれぞれ914mm、610mm及び914mmで、内表面が腐食を防止する措置を講じた金属で造られているものとする。
イ 電気炉は、直径76mmの開口を有し、かつ、当該開口部に平行して置かれた試料ホルダー内の試料中央部の直径38mmの範囲に、平均2.5W/cm2の放射エネルギーを20分間与えることができるものとする。
ウ 試料ホルダーは、試料が容易に着脱できるもので、かつ、試料の縦、横それぞれ65mmの範囲が加熱できるものとする。
(2) 煙濃度測定部の光源は、ガス入りタングステン電球を使用する。
3 試験方法等
(1) 試料は、加熱表面以外の部分をアルミ箔で覆い、かつ、試料と同じ大きさの硅酸カルシウム板等の断熱材を当該試料の裏面に付して試料ホルダーに取り付ける。
(2) 電気炉により、試料中央部の直径38mmの範囲に平均2.5W/cm2の放射エネルギーを放射して試料を加熱し、煙の発生により光の透過率が最小になつたときの当該最小値を測定する。
(3) 煙濃度は次式によつて求める。
Dsは、煙濃度
Vは、チヤンバー係数(単位 m3)
Aは、試料の加熱表面積(単位 m2)
Lは、光路長(単位 m)
Tは、透過率(単位 %)
4 試験結果
5回の発煙試験の結果、Dsの値の平均値が400以下であり、又は引き続いて行つた3回の試験において、Dsの値がいずれも400以下であること。
第3 ハロゲン化水素発生量の試験
ハロゲン化水素発生量の試験は、次に掲げるところによる。
1 試験試料
試料は、燃焼防止被覆材にあつてはその素材(複合被覆材であるときは、当該複合被覆材を構成する素材のうちハロゲン化水素の発生が最も大きいもの)を、難燃性ケーブルにあつてはそのケーブル素材を、重さ0.5gに裁断したものを3個とする。
2 試験装置
試験装置は、乾燥空気供給部、燃焼部及び吸収部からなる燃焼ガス試験装置(別図第4)とする。
(1) 乾燥空気供給部のエアポンプは、500ml/分±100ml/分の空気を送入できるものとする。
(2) 燃焼部の電気炉は、800℃±30℃で30分間加熱できるものとする。
(3) 吸収部は、水酸化ナトリウム溶液50mlを吸収液とする吸収びんとする。
3 試験方法等
燃焼防止被覆材又は難燃性ケーブルの成分中に塩素、臭素又はよう素を含むものにあつては(1)から(5)までにより、ふつ素を含むものにあつては(1)から(4)まで及び(6)により試験を行う。
(1) 吸収びんに1/5N水酸化ナトリウム溶液50mlを入れ、乾燥空気供給部、燃焼部及び吸収部の各部分を接続する。
(2) 電気炉を炉中央部温度が300℃以上400℃以下になるよう調整する。
(3) 空気を500ml/分±100ml/分で送入し、試料が着火しない温度で約5分間予熱した後、炉の温度を800℃±30℃に上昇させ、30分間加熱する。
(4) 吸収びんの吸収液を水で200mlまで希釈した試料をつくる。
(5) 試料100mlを採取し、これに1/10N硝酸銀20ml及び硫酸第2鉄アンモニウム溶液1mlを加え、1/10Nチオシアン酸アンモニウム溶液で滴定する。
(6) 試料10mlを採取し、これに水90mlを加え、1/10N塩酸でpH5.0以上6.0以下に調整した後、水を加えて250mlとしてふつ化物用試料をつくり、次の方法によりふつ化物イオン濃度を求める。
ア ふつ化物用試料50mlずつを2つのビーカーに採取し、それぞれにJIS K0105のふつ化物イオン検量線溶液(10μgF-/ml)10mlを加え、このうち1のビーカーにJIS K0105のイオン強度調整用緩衝液(I)を40ml加えたものをA液とし、他のビーカーにJIS K0105のイオン強度調整用緩衝液(Ⅱ)を40ml加えたものをB液とする。
イ A液及びB液のそれぞれについて、JIS K0105に定める電位差計を用いて電位を測定する。
ウ A液及びB液のそれぞれの電位の差が3mV以下の場合には、B液についてJIS K0105により作成した検量線を用い、ふつ化物イオン濃度を求める。
エ A液及びB液のそれぞれの電位の差が3mVを超える場合には、ふつ化物用試料50ml以上について、JIS K0105に定める妨害イオンを除去する操作を行い、当該操作を行つた試料についてB液を調製し、ウの操作を行う。
(7) ハロゲン化水素(ふつ化水素を除く。以下この号において同じ。)発生量の算出式はアにより、ふつ化水素発生量の算出式はイによる。
ア ハロゲン化水素発生量の算出式
Hは、ハロゲン化水素発生量(単位 ㎎/g)
Bは、空試験による1/10Nチオシアン酸アンモニウム溶液の消費量(単位 ml)
Aは、本試験による1/10Nチオシアン酸アンモニウム溶液の消費量(単位 ml)
fは、1/10Nチオシアン酸アンモニウム溶液のフアクターWは、試料採取量(単位 g)
イ ふつ化水素発生量の算出式
(ア) 妨害イオンを含まない場合
Cは、ふつ化水素発生量(単位 ㎎/g)
aは、検量線から求めたふつ化物イオン濃度(単位 μgF-/ml)
a0は、空試験液中のふつ化物イオン濃度(単位 μgF-/ml)
Wは、試料採取量(単位 ㎎)
(イ) 妨害イオンを含む場合
C、a、a0及びWは、前号と同じ
4 試験結果
3回の試験の結果、ハロゲン化水素(ふつ化水素を除く。)発生量がいずれも350㎎/g以下であり、かつ、ふつ化水素発生量がいずれも200㎎/g以下であること。
第4 難燃特性
次の1又は2に掲げる性能を示すものは、難燃特性を有するものとする。
1 第1から第3までに定める試験において、いずれの判定にも適合するもの
2 第1に定める試験の3(3)において延焼炎が認められず、かつ、バーナーの炎を消したときに試料に着火炎が残存しないもの
別図第1 試料取付け部
別図第2 バーナー
(その1) バーナー本体
(その2) バーナー口ガス放出口
別図第3 発煙試験装置
(その1) 全体図
(その2) 電気炉
別図第4 ハロゲン化水素発生量試験装置