消防予第108号
昭和45年6月2日
改正:平成9年消防危第27号
各都道府県消防主管部長 殿
消防庁予防課長
アルキルアルミニウムに関する資料の送付について
危険物としてのアルキルアルミニウムに関しては、本年2月及び昨年3月に行なわれた都道府県危険物規制事務担当者会議において、
1 特殊な性状をもつ危険物であること(空気に接触すると発火する、水と激しく反応する等の危険があること、効果的な消火薬剤が開発されていないこと等)。
2 昭和32年頃から石油化学工業で触媒として使用され始めていること。
3 最近、その使用量が増加していること。
4 従来は、輸入にたよつていたが、今では国内の2社によつても製造されていること。
5 移動タンク貯蔵所として規制されるタンクコンテナ等で輸送されるようになつたこと。
6 いずれ関係資料を送付すること。
等について連絡したところであるが、国内での生産及び輸送が本格化するため、アルキルアルミニウムの性状等火災時の措置、輸送容器等の荷姿及び製造又は使用工場に関する資料を送付するので危険物規制について遺漏のないよう配慮願いたい。
管下市町村に対してもこの旨示達し、危険物の保安の徹底を図られたい。
記
1 性状等
(1) 名称
アルキルアルミニウムとは、アルキル基とアルミニウムの有機金属化合物の総称である。この化合物には、ハロゲンを含むものもある。
(2) 物理的、化学的性状
ア 常温で固体又は液状の物品である。(常温で液状のものは、危険物第4類第一石油類に該当する。)
表(省略)
なお、流通量の多い物品は上の表(省略)中(1)から(4)までに掲げるものである。
イ 空気との接触による反応の激しさは、個々の化合物によつて異なるが、一般には空気と接触すると白煙を発して自然発火する。
また、水と接触すると爆発的に激しく反応して発火飛散する。
ウ 空気又は水との反応の激しさは一般に炭素数及びハロゲン数が多いものほど低くなる。
エ ベンゼル、ヘキサン等の炭化水素系溶剤で希釈されたものは、純度の高いものより空気又は水との反応の激しさは緩和される。
その程度は希釈剤の種類と希釈量によつて異なる。
オ 高温においては不安定であり、分解して可燃性ガスを発生する。
(3) 人体に対する影響
皮ふに附着すると激しい火傷を起す。また、燃焼時に発生する白煙は、刺激性があり、多量に吸入すると気管や肺が侵されることがある。
(4) 用途
ポリエチレン、ポリプロピレン、合成ゴム、合成洗剤(アルファーオレフイン系のもの)等を合成する場合の触媒として使用される。
2 火災時の措置
(1) 消火薬剤
アルキルアルミニウムが発火した場合は極めて消火が困難であり、この火災を鎮圧するのに効果的な消火薬剤は現在ない。
特に、水又は水系の消火薬剤を使用すると、その水がアルキルアルミニウムと激しく反応し、爆発音を伴なつて発火飛散するので、極めて危険であり、その使用は絶対に避けなければならない。
また、四塩化炭素等の蒸発性液体の消火薬剤とも激しく反応して、有毒ガス等を発生するので、その使用も絶対に避けなければならない。
火勢の抑制に比較的効果があるのは、消火粉末(重炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウムを主剤としたもの)、膨脹ひる石(バーミキュライト)、乾燥砂等である。
(2) 消火方法
アルキルアルミニウムが発火した場合は、効果的な消火方法がないので、その影響ができる限り周囲におよばないようにして安全に燃焼させる。
燃焼物が流出し、拡大するおそれがある場合は、乾燥砂(これが得られない場合は、できる限り乾いた土)でその周囲を囲い、できる限り限定された場所で消火粉末や膨脹ひる石等で火勢を抑制しながら安全に燃焼させるようにする。
また、安全な場所への移動が可能である場合は、安全地帯に移動させて上記の措置をとる。
(1) 輸送には、ボンベ等の運搬容器及びタンクコンテナが使用されている。
運搬容器は、サンプル輸送用として使用され、内容量が150mL程度のものから100L程度のものまで各種ある。
また、タンクコンテナは工業用のものの輸送用として使用され、輸送の主体となるもので、その内容量は1,300L程度(直径1m前後全長2m前後)である。
なお、現在のところ、タンクローリーによる輸送は行なわれていないが、タンクローリーによる輸送が行なわれる場合は別途通知する予定である。
(2) 運搬容器及びタンクコンテナには、いずれも窒素ガスが封入されている。
封入されている窒素圧力は運搬容器の場合2kg/cm2程度、タンクコンテナの場合0.2㎏/cm2程度となつている。
(3) 運搬容器及び移動タンク貯蔵所の移動貯蔵タンクとしてのタンクコンテナは、いずれもその全体を赤色に塗色し、次のように表示をさせている。
ア 運搬容器には、危険物の規制に関する規則第44条第1項に規定する表示をするほか、白色の文字で「禁水・火気厳禁」と表示すること。
イ タンクコンテナには、危険物の規制に関する政令第15条第10号に規定する表示及びタンクコンテナ式(積載式)の移動タンク貯蔵所の取扱いに関する運用基準(昭和41年10月13日付け 自消丙予発第129号)に定める表示(当該表示をする部分の地は白色、文字は黒色の表示)をするほか、白色の文字でタンクの両側面に「アルキルアルミニウム」及び「禁水・火気厳禁」と鏡面に「禁水」、「火気厳禁」等と表示すること。
なお、文字の大きさ及び表示の位置については、別図(省略)を参照されたい。
(4) 輸送は、通常、濃度100%のものであるが希釈品も輸送されることがある。
4 製造又は使用工場
アルキルアルミニウムの製造工場及びアルキルアルミニウムを使用することが予想される工場は、次のとおりである。
なお、これら工場間の輸送は、主としてタンクコンテナを用い鉄道又は自動車によつて行なわれる。
(1) 製造工場
表(省略)
(2) 使用することが予想される工場
表(省略)
5 常温において固体のアルキルアルミニウムは、消防法別表(省略)に掲げる危険物には該当しないが、その性状等火災時の措置は液状のアルキルアルミニウムと同様であるので十分な注意と指導が必要である。
また、輸送容器等の荷姿及び製造又は使用工場は前記3及び4と同様である。
別図(省略)