消防特第44号

平成27年3月30日

関係道府県消防防災主管部長 殿

消防庁特殊災害室長

 

石油コンビナート等防災本部の機能強化のための訓練の充実について(通知)

 

東日本大震災及びその後において発生した石油コンビナート災害では、大規模な爆発、火災の延焼等により、当該事業所の敷地外、更には石油コンビナート等特別防災区域の外部にまで影響が及ぶ事案も発生しました。

このような広範囲に影響を与える災害に対応するため、平成268月から「石油コンビナート等防災体制検討会」を開催し、このたび下記のとおり報告書を取りまとめました。

貴道府県におかれては、当該報告書の趣旨も踏まえ、訓練の充実等を通じて石油コンビナート等防災本部を中心とする防災体制の充実強化に努めていただきますようお願いいたします。また、貴道府県内の関係市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対しても周知されるようにお願いいたします。

なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。

 

 

第1 石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)の機能強化のための訓練のあり方について

1 防災本部の機能強化のための訓練

(1) 災害事象そのものの理解や関係機関の対応に関する相互理解を深めるとともに、災害のフェーズに応じて求められる災害対応の判断、関係機関への情報伝達及び情報共有に関する対応が、適切に盛り込まれた訓練を実施していくことが必要であること。

(2) より高いレベルの災害対応能力を醸成するためには、訓練実施者にあらかじめ開示される情報を地震の規模や災害想定、大筋のシナリオ等に限定し、事象の進展に応じて、状況付与を行うことで、その都度訓練実施者に適切な対応を考えさせるブラインド型の図上訓練の比率を高めていくことが重要であること。

(3) 道府県の職員の人事異動の頻度等を考慮すると、組織の災害対応能力を維持、向上させていくため、シナリオ型(訓練において、参加者にあらかじめ訓練シナリオを提示し、そのシナリオに沿って訓練を実施するもの)やブラインド型の実働訓練や図上訓練を訓練実施者の練度に応じて組み合わせ、有効に活用していくことが必要であること。

(4) 各職員が、訓練実施者としてだけではなく、訓練の企画者、コントローラーや訓練評価者をバランスよく経験することにより、組織全体としての対応能力を高めることが可能と考えられること。

(5) 防災本部における災害対応の基本的な手順を取得するためには、シナリオ型の訓練を少なくとも年1回以上実施することが必要であること。これらの訓練で防災本部の基本的な機能を理解し、次のステップとして、ブラインド型の図上訓練に進んでいく必要があること。

一方、道府県において、石油コンビナート災害に係るシナリオ型の訓練やブラインド型の訓練を1年間に複数回企画し実施することは、時間的あるいは人的資源の制約のため、容易ではないことから、比較的準備の負担の少ない担当部署だけで実施できるブレインストーミング形式の打ち合わせの実施や、その結果も踏まえた訓練シナリオの作成への参画等の機会も併せて活用することにより、災害事象の理解、防災本部における関係機関の連携、災害対応手順等に関する道府県の担当者の理解を深めていく必要があること。

2 訓練シナリオの作成に際しての留意事項

(1) 訓練のシナリオを作成する際には、①防災本部の構成員には国の出先機関等も含む多様な関係者が含まれていることや、②石油コンビナート災害は、ガスの大量漏えい、大規模な石油タンク火災、石油の海上流出等、多様な態様を有すること等を考慮し、必要な人員・資機材等の判断(応援要請等を含む)、災害の規模や進展に応じた判断等(避難や住民広報、物質の調整等)をシナリオに盛り込むことを考慮することが必要である。この場合において、報告書に示す標準災害シナリオが参考となること。

(2) 大規模地震等により、石油コンビナート等の災害を含めた複合災害が発生した場合には、各道府県では地震等に係る災害対策本部が設置され、石油コンビナート等防災本部の機能を包含するという運用がなされることに留意することが必要であること。このような場合においても、道府県の防災本部において行う災害対応は、基本的には、石油コンビナート等の単独災害の場合と同様であるため、地震等に関する災害対策本部との連携に留意し、災害対応全体の中で、防災本部に求められる対応を確認できる訓練シナリオとすることが必要であること。

 

第2 標準災害シナリオの活用について

1 標準災害シナリオの特徴

東日本大震災の事例を参考に作成した地震起因型の標準災害シナリオ及び、近年の石油コンビナートで発生した大規模な爆発・火災事故を参考にした標準災害シナリオをそれぞれ作成したこと。なお、訓練の構成員となる機関は多様であり、実災害においては、それぞれに求められる様々な対応があるが、当該標準災害シナリオは、防災本部の対応を中心に整理を行っていること。

標準災害シナリオは、①訓練企画者のための訓練シナリオ作成、②訓練評価者のチェックリスト作成、③訓練参加者が実施する必要な対応や関係機関相互の連携内容等の理解促進に資する内容となっていること。よって防災本部の機能強化につながる訓練の企画・実施及び災害事象の理解促進に活用されたいこと。

2 留意事項

標準災害シナリオはあくまで一例であり、各道府県の石油コンビナート等防災計画で定めた組織体制や情報伝達フロー等がそれぞれ異なることから、訓練シナリオ作成の際には、それぞれの道府県の特徴を反映させたものとする必要があること。

また、当該シナリオは、道府県の防災本部の対応を中心に整理しているが、市町村が石油コンビナート等防災計画に基づく石油コンビナート等現地防災本部や地域防災計画に基づく現地災害対策本部を設置して対応を行う場合にも関係機関との連携等について参考となるものと考えられること。

 

第3 訓練計画の考え方等

1 道府県における全体の訓練計画の中で、適切に石油コンビナート等災害に係る訓練を位置づけ、実施することが必要であること。この場合において、第1、1(5)の考え方に留意して、石油コンビナート等災害に係る訓練を実施すること。

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