消防危第174号
消防特第134号
平成26年6月26日
各都道府県消防防災主管部長
東京消防庁・各指定都市消防長 殿
消防庁危険物保安室長
消防庁特殊災害室長
三菱マテリアル(株)「四日市工場爆発事故を踏まえた保守・点検時等の事故防止に係る留意事項について
近年、石油コンビナート等における事業所で爆発火災等の重大事故が発生し、その一部は多数の死傷者が出るなど深刻な事故となっています。
石油コンビナート等における災害防止対策の推進については、「石油コンビナート等における災害防止対策の推進について(平成26年5月16日付け消防危第124号・消防特第87号総務省消防庁次長通知(要請)」により、各業界団体が取り組む内容をまとめた行動計画を策定すること等を要請しているところです。
一方、本年1月9日に発生した三重県四日市市の三菱マテリアル(株)「四日市工場爆発事故を受け、同社が設置した事故調査委員会から最終報告書が6月12日に公表されました。
また、危険物保安技術協会で開催された「危険物施設の保守・点検時の事故防止に係る検討会」においても、今回の事故の分析及び同種事故防止対策の検討が行われ、6月20日に最終報告が取りまとめられたところです。これらにより、クロロシランポリマー類(シリコン原子2個以上が結合している分子の化合物、又は、これらが何種類か混在したものの総称。)及びその加水分解生成物(以下「クロロシランポリマー類等」という。)の危険性や、取り扱う物質の危険性やその反応過程が十分に把握されていない場合の問題が明らかになりました。
今般、下記のとおり、今回の事故の直接の原因となった物質に係る留意事項を取りまとめるとともに、非定常作業時等に予期せぬ危険な反応等により災害の発生のおそれがある場合の留意事項を取りまとめました。これらのことを踏まえ、石油コンビナート等の事業所の事故対策等の充実強化が図られるよう、別添1及び2のとおり各業界団体傘下の事業者等に対し周知徹底することにより、石油コンビナート等における事故防止に向けた取組を進めるようお願いしたところです。
貴職におかれましては、本趣旨を踏まえ、下記事項に留意の上、石油コンビナート等における災害防止対策の推進に係る指導に努められますようお願いするとともに、貴都道府県の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合を含む。)に対してもこの旨周知されるようお願いします。
なお、本通知は消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。
記
1 クロロシランポリマー類等が堆積する工程がある場合の留意事項
クロロシランポリマー類は、可燃性ではあるが、爆発威力は小さい。一方、低温での加水分解により生成していたクロロシランポリマー類の加水分解生成物の発火・爆発危険性は、クロロシランポリマー類と比較して、摩擦感度及び静電気火花感度は低いが、熱感度や打撃感度が高く、爆発威力はきわめて大きいという性状を有していることが明らかになった。このため、これらの取扱いに当たっては、以下の措置を講ずることが必要である。
(1) 十分なリスクアセスメントによる安全対策
クロロシランポリマー類等の取扱いについては、定常作業、非定常作業のいずれにおいても、構成機器、作業内容、発火・爆発等の危険性等を総合的に勘案し、三菱マテリアル(株)四日市工場の爆発火災事故や、別表1の事故事例等も参考とした上で、適切に危険を抽出することにより十分にリスクアセスメントを行い、実態に合った適切な安全対策を講じること。
(2) 設計段階における安全対策
設計段階における安全対策としては、以下の対策が考えられる。
ア クロロシランポリマー類等が装置や配管に堆積しにくい設計とすること。
イ クロロシランポリマー類等が装置や配管に堆積する構造であっても、容易かつ安全に堆積物が除去できる設計とすること。
ウ クロロシランポリマー類等の堆積状況等を計測装置等により客観的に判断できるようにしておくこと。
(3) 非定常作業時のリスクアセスメント及び対策
クロロシランポリマー類等が堆積した装置、配管等を開放する等の非定常作業に係るリスクアセスメントを十分に行うとともに、その結果に基づき、特に堆積したクロロシランポリマー類等の危険性及び発生し得るリスクに備えた作業手順書を作成すること。
(4) 安全対策の周知・教育
クロロシランポリマー類等の危険性、リスクアセスメントの結果、得られた安全対策の内容について、従業者への周知・教育を徹底すること。
(5) ヒヤリハット事例の共有
クロロシランポリマー類等の事故やヒヤリハット等の事例については、事業者間で積極的に情報共有を行い、リスクアセスメントや従業者教育等に活用すること。
2 非定常作業時等に予期せぬ危険な反応等により事故の発生のおそれがある場合の留意事項
クロロシランポリマー類等以外の物質の取扱いにおいても、今回の事故に見られるように、副生成物等の危険性やその反応過程が十分に把握されていない場合、当該副生成物を取り扱う非定常作業等に伴うリスクを適切に評価することができなくなり、事故が発生する可能性がある。この種の事故を防止するため、以下の事項に留意することが必要である。
(1) 反応、精製過程等において未反応物や副生成物等が残渣として付着した装置や配管等を取り扱う作業における事故の防止
ア 残渣を洗浄するための機器の解体・取り外し作業、開放作業等の非定常作業
イ 活性が残った物質が触媒に付着している状況での、廃棄までの保管作業等では、残渣や活性が残った物質の危険性やその反応過程が十分に把握されていない場合、安全対策が不十分なものとなり、思わぬ事故が発生するおそれがある。そのため、具体的には、以下のような安全対策や安全管理が有効であること。
① 必要に応じて分析等により危険性を調査した上でのリスクアセスメントの実施、及びその結果に基づく安全対策の実施
② 作業前ミーティング等における当日の作業計画に関する従業者間での情報共有
③ 作業を行う従業者への十分な教育の実施
④ 統括的に現場の安全を管理する者による安全管理体制の確保
(2) ヒヤリハット事例等の分析、共有による事故の防止
ヒヤリハット事例等を継続的に分析し、発火・爆発等の危険性が疑われる場合、どのような危険性があるのか調査し、対策を講じていくことが必要であること。その際、火災・爆発等に関する性状が明確でない物質については、分析を行う、又は専門家の判断を仰ぐ等により確認すること。その危険性及び対策については、協力会社の従業者も含め、周知徹底・情報共有を図ることが必要であるが、可能な場合には、関係業界、他社等に幅広く、適切かつ積極的に情報提供を行うこと。
(3) その他
別表2の事故事例も参考に、危険な反応等により事故の発生のおそれがある物質を取り扱う場合における危険性については、十分なリスクアセスメントを行い、適切な安全対策を講じること。
別表
1 クロロシランポリマー類等が堆積する工程がある場合
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工程名又は作業名 |
事故内容 |
改善対策 |
事例 1-1 |
反応炉 |
炉内に残っていたクロロシランポリマー加水分解生成物が、洗浄作業時に発熱又は衝撃で発火した。 |
①高温にて加水分解を行 う。 ②炉内作業前に充分に 湿潤させ、湿潤させた状 態で作業を行う。 |
事例 1-2 |
反応炉 |
堆積物がダクトホース内等で発火した。 |
堆積物を頻繁に洗浄若しくは清掃する。 |
事例 1-3 |
小型炉 |
サンプルの取り出し時に、チャンバー内でクロロシランポリマーが発火した。 |
チャンバー内の洗浄は頻度を定めて行う。 |
事例 1-4 |
蒸留 |
サンプリング作業後、ノズルや床の残渣物が発火した。 |
サンプリングノズルは水を入れた容器に入れ、こぼれたクロロシランポリマーは濡れたウエスで拭き取る。 |
事例 1-5 |
解体作業 |
解体作業に伴うフランジ面及びバルブ清掃の際に発火した。 |
湿潤状態にした上で、濡れたウエスで堆積物を除去する。 |
事例 1-6 |
その他 |
ダクトホース及び接続管等の内部の堆積物が発火した。 |
ダクトホース等の洗浄は頻度を定めて行う。 |
事例 1-7 |
取外作業 |
誤ってドレンの出口側のバルブを開放し、液体が漏洩するとともに、その液体が水と反応し、有毒ガスが発生した。 |
作業ごとにおける職員教育の実施。 |
事例 1-8 |
点検作業 |
ポンプ吐出フランジと第1バルブを接続する配管の接続部分が緩んでいたため、配管が振動で回転して外れ、液体が漏洩した。 |
基本設計、点検法等の見直し。 |
事例 1-9 |
系統の切替作業 |
作業手順のミスなどにより、配管が閉塞したもの。 |
設計変更等の検討、作業人員の適正な割り振り等。 |
事例 1-10 |
開放洗浄作業 |
開放機器内の残渣物が、作業の摩擦によって発火した。 |
開放作業前に高温蒸気で十分に処理し、ガス検とドレン水pH測定で判断する。 |
事例 1-11 |
その他 |
配管残液トリクロロシラン除外作業中に吸引ホース内に固着しているシリカ類にトリクロロシランが吸着し、静電気で着火して、吸引ダクト内に残留していた水素に引火してダクトが破裂した。 |
①静電気を発生しにくい材質の機材を使用する。 ②ホースは使用前に洗浄を行い、固着物の除去を行う。 ③装置内の水素を窒素に置換する手順を改善した。 |
2 非定常作業時等に予期せぬ危険な反応等により事故の発生のおそれがある場合
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工程名又は作業名 |
事故内容 |
改善対策 |
事例 2-1 |
開放点検前作業 |
ブタジエンを抽出精製する装置の精留塔で、装置の開放点検に備えて塔内部の炭化水素をスチーミング後、窒素に置換。さらに作業者が塔内に入るために、窒素を空気に置換する作業を行っているときに、塔内で小爆発が起こった。 |
高濃度のブタジエンのポリマーが蒸留塔に蓄積していたことが原因であり、その対策として、 ① 定期修理工事時に開放点検を行う場合のパージ法を変更。エアパージの中止。ポリマーの発火防止のため、ポリマーの付着が考えられる機器は注水。 ② ポリマー清掃作業は、ポリマーが十分水を含んだ状態であることを確認し、清掃作業の進行に合わせて徐々に水を抜きながら行う。 ③ ポリマーの発生を抑制。ポリマー発生の引き金となる酸素をスタート時にできるだけ除去。洗浄を徹底し、酸化防止剤の添加を強化。 |
事例 2-2 |
定期修理 |
エチレン製造装置の定期修理に合わせ、ガソリン塔の塔内充填物の交換を計画した。ガソリン塔の開放作業中に、内部の重合物から発火した。 |
エチレン装置のガソリン塔上部にある充填層部分にスチレンおよびインデンなどの重合物が多量に付着していた。この付着物の中の不飽和重合物が酸化発熱して出火したものと推定される。塔内の温度計を増設し、温度監視を強化する。 |
事例 2-3 |
清掃作業 |
ポリブタジエン製造設備を停止中、重合反応槽を開放して内部を清掃した。その時、残存・堆積していたがブタジエンゴムが発火して火災となった。 |
堆積残存していたポリブタジエンが空気により酸化発熱し、発火したことが原因であり、その対策として、 ① 重合反応槽を停止する場合には酸化防止剤を予め注入する。 ② 重合反応槽内のゴム除去作業時には散水を実施する。 ③ 防災組織員の集合研修を実施し、任務を再教育する。 |
事例 2-4 |
溶剤除外設備(活性炭吸 着塔)の発火 |
屋上に設置されている排ガス除外設備の活性炭吸着塔が発火した。 |
過去の事故事例を調査した結果、活性炭の被吸着物質として、ケトン類は特異的に発火するリスクが高いことが判明した。アセトン排出は基本的に活性炭吸着塔による処理は行わない。アセトンと活性炭吸着処理が必要な物質とともに排出する場合は、活性炭吸着塔の前にスクラバー設備を吸収除去する設備仕様とした。 |
事例 2-5 |
回収触媒ドラム缶抜出作業 |
発火の直接原因は、活性炭の吸着物質のアセトンあるいはその誘導体の酸化による発熱と判断した。銅/クロム触媒は2回/日でドラム缶に抜出作業を行っている。フィルターで捕捉された触媒を窒素で逆押しシュート下部のドラム缶に落とす。この際、ドラム缶が加圧状態にならない様、オープンラインを設置している。ある日触媒回収作業実施後、オープンラインから白煙が発生した。オープン配管を水で洗浄、スチームを通気することで白煙が収まった。 |
オープンラインに活性が残った触媒が同伴・蓄積し、更に乾燥・発熱して白煙が発生した。事象発生後は2回/日の触媒抜出後、手動でスチーム通気を行った。後日配管及び自動弁を設置して自動でスチーム通気できるようにし、安全性を向上させた。 |
事例 2-6 |
プラント解体作業 |
廃止したプラントの架構を解体するためにガス溶断作業を実施していたが、その溶断火花が階下のろ過器の開口部から内部に入り、内部の樹脂コーティング層に着火し、燻った。なお、当該プラントは5年間に製造中止(廃止届)した後、発災の3ヶ月前に、解体業者に売却していた。 |
プラント売却時、設備内の可燃物(樹脂コーティング等)の所在を示す資料も提供していたが、当該ガス溶断作業での作業者・監視員ともに、階下に樹脂コーティング機器があるとの認識が無かったため、ろ過器開口部の養生をしていなかった。 対策として、火気使用工事時の可燃物有無確認の徹底等、工事業者に注意事項の遵守徹底を指 導する。 |
事例 2-7 |
分液排出 |
有機過酸化物製造工程の分液排出工程において、中間体の有機過酸化物が、廃酸タンク内の廃硫酸と化学反応して爆発し、火災となった。爆発によって当該タンクは破損し、廃水処理施設の塩化ビニル配管及び隣接タンク等も破損した。 |
① 中間体の回収分液工程で排出された中間体を完全に回収するための設備を設ける。 ② 廃液タンク内の残液除去廃酸タンク内には、残液が残らないようなポンプ設備を設ける。 ③ 教育等の徹底作業員教育を実施するとともに、処理作業を標準化して、作業内容を文書等で記録する。 ④ 設備の新設 ア 専用の廃液タンク等を設置する。 イ 廃液の中和設備を設置する。 ウ 温度センサー及び散水設備を設置する。 |
事例 2-8 |
循環・攪拌 |
半導体用感光剤の製造装置の廃液タンクで爆発が起こった。消防法上の危険物(第5類第2種自己反応性物質)であるNAC-5(商品名)「の廃液タンクに、ベンゼンを主体とする溶媒の水分解部で排出される酸性廃液2,400Lを受け入れた後、中和処理用の液体水酸化ナトリウム350Lを同タンクに受け入れ、タンク内液を循環、攪拌するためポンプの起動を行い、循環用配管のバルブを開放した瞬間、タンクが爆発炎上した。 |
① 引火性液体の混入防止 引火性液体が廃液タンクへ混入するのを防止する。 ② 設備の改良 FRP製タンク及びテフロンライニング配管を導入する。 ③ 中和処理液の管理 再使用水酸化ナトリウムの使用について、安全管理運用等で使用方法を管理する。 |
事例 2-9 |
開放清掃作業 |
排水処理タンクの開放清掃及び内部のコーティング更新工事の準備作業として、貯蔵物である汚水を附属ポンプで排出して、ほとんど空にした状態で屋根板マンホールを開放後、側板マンホールを開放しようとしたところ、タンク内部から「ゴー」という音ががし、その約5秒後に、爆発音とともに開きかけた側板マンホールから炎が噴き出し、火災となった。 |
① マニュアルの策定 開放手順のマニュアルを作成する。 ② 定期点検時における硫化鉄の除去 硫化鉄を処理するため、ウォータージェット等でスラッジを除去する。 ③ 設備の新設 ア ダイヤフラムポンプ用ノズルを設置する。 イ 残留排水のパージラインを設置する。 ウ 窒素張り込み用の配管を設置する。 ④ その他 類似タンクについても上記(1)から(3)までの対策を実施する。 |
事例 2-10 |
清掃作業 |
プラズマCDV装置の排気配管で、定期的に行っている管内蓄積物の清掃作業のため、作業員が閉止板(閉止フランジ)「を外したところ、数分後に配管内で爆発が発生した。 |
① 物質の調査 副生成物の危険有害性を調査する。 ② 作業手順を定めた計画書の作成 作業手順を定めた計画書を作成する。特に、引火性又は可燃性の物質を取り扱う作業については、把握した情報に基づいた安全な作業手順とする。 ③ 作業手順の周知 作業手順を定めた計画書の内容を作業者に周知し、的確な作業を実施する。 ④ その他 ア 設備などの改善を行う。 イ 安全衛生教育徹底する。 |
事例 2-11 |
洗浄作業 |
半導体工場において、特殊材料ガスを処理する排ガス処理設備のウォータースクラバーで、毎月1回実施している洗浄作業中、発生した水素が逆流した空気と混合して爆発し、ウォータースクラバーが破損した。2名の作業員が、爆発時に飛散した液を浴びて軽傷を負った。 |
① 設備の改良 ア 空気(酸素)が逆流しない構造とする。 イ 流量計を設け、窒素パージを十分に行う。 ② 作業手順等の見直し ア 作業標準を作業者の判断で変更しない。 イ 保護具を着用する。 |
事例 2-12 |
流量制御設備 |
プラズマCDV装置のシランガス流量制御設備が不調のため、過剰のシランが装置に供給され、通常の状態より大量のシランガスがCDV装置に接続する排ガス燃焼設備に供給された。さらに、排ガス燃焼設備に供給される酸素ガスが、原因不明で停止となった。そのため、大量の未燃のシランガスが排気ダクトに流入し、そこで空気と反応して自然発火した。さらに、排気ダクトがポリプロピレン製であったために、ダクトに沿って火災が拡大した。 |
① ダクトの改良 ア ダクトを不燃化し、接続部やエルボにガスや粉末が滞留しにくい構造にする。 イ 排気ダクトを独立系統とし、掃除口、風速センサー、火災検知センサー等を新たに設置する。 ② 天井裏の改良 ア 防火壁及び防火垂れ壁を新たに設置する。 イ 天井裏への進入口を新たに設置する。 ウ 天井裏へ消火器を新たに配置する。 |
事例 2-13 |
洗浄作業 |
アミン類製造施設で反応器の洗浄後、攪拌機の取り外し作業中に爆発が発生し、作業員が負傷(軽傷2名)した。原因は、自動調節弁等から漏えいした水素が反応器に滞留し、攪拌機の取り外し時に、空気が入り込み、何らかの原因で着火、爆発したものと推定。 |
① 高圧反応器に通じる可燃性ガスの配管において、圧抜き後に仕切り板又はエンドフランジを設置し、開放機器と可燃性ガスラインを遮断する。 ② 高圧反応器は、洗浄後窒素等の不活性ガスでパージし、品質管理部の分析により可燃性ガスが爆発限界以下であることを確認する。 ③ 工事におけるチェックリストを作成し、製造部門と工務部門によるダブルチェック等を行う。 ④ 高圧ガス設備直近のバルブは、定期的自主検査時に気密試験を実施する。 |
事例 2-14 |
スタートアップ中 |
事故前日、停電が発生し、四フッ化エチレン精製設備のスタートアップ中に発災、爆発し、1名が重傷、3名が軽傷を負った。事故原因は、ポンプの発熱により、ポンプ内で四フッ化エチレンが最小分解温度を超えて自己分解(小爆発)し、ポンプが破損、1回目の爆発が発生。この爆発により、塔底部の四フッ化エチレンの液が噴出し火災が拡大、分解爆発が発生。ポンプの発熱は、ポンプ冷却配管の閉塞によるものと推定。 |
① 設備・技術面の充実策 ・ 重合防止剤の注入を常時監視できるシステムとする。 ・ ポンプの冷却ラインの閉塞を早期に感知するシステムとする。 ・ プロセスの重要度の認識と監視項目の見直しを実施するためにプロセスハザード解析を実施する。 ② 保安管理面の充実策 ・ プロセスの危険性や保安確保に向けた教育体制を充実する。 ・ 各管理部門の連携強化を推進し、実施状況を工場長が監査する。 ・ 設備を改造・更新する際は、部門を横断する体制で安全審査を実施する。 ・ 保安管理部門は、保安確保の状況を監査する。 |
事例 2-15 |
定期修理 |
定期修理に向けてプラントを停止、除害操作中に系内の液体塩素精留塔の出口ガス温度がレンジオーバーを示したが、温度計の誤指示と判断して作業を継続していたところ、塩素ガス供給配管からの発煙と出火を確認。原因は、塩素ガスと液体塩素精留塔のステンレス製の充填物が塩素化反応を起こし、さらに精留塔の出口配管が閉塞したことにより、発熱反応、異常反応が継続され塩素ガス供給配管が開口したものと推定。通常の取扱いの温度では塩素ガスとステンレスは反応しないが、金属表面が活性であること、圧倒的な表面積があること、反応熱が蓄積される等の条件が重なれば比較的低い温度でも反応することが検証実験で確認された。 |
① 充填物の材質を塩素と異常反応を起こさない樹脂製に変更する。 ② 4年に1度の開放検査時に実施している定期洗浄を毎年実施する。 ③ 塩素の排出方法を見直し、塩素蒸発器の底部から、液体塩素を直接抜き出せるよう設備改造する。 ④ 塩素ガスヒーターの加温源をスチームから温水とし、ガス温度と熱源の管理を強化し、異常発生時には、インターロックで熱源供給を停止する。 ⑤ 温度監視の強化、流量管理を行い、異常反応を抑制する。 ⑥ 基準書の改訂、周知。保安防止に対する意識改革等 |
事例 2-16 |
復旧工事後の気密試験 |
ポリエチレン製造施設の反応器に接続された緊急放出弁の下流にある放出管の復旧工事が完了し、耐圧試験、気密試験実施後、試験用治具の閉止版を取り外す作業中に窒素が噴出し、1名が死亡、1名が軽傷を負った。原因は、試験装置から延長した高圧ホースを放出管に接続する際、放出管の枝管端部の逆止弁を取り外さないで接続したことにより、高圧状態のまま閉止弁を取り外そうとした際に窒素が噴出した反動で放出管が大きく反転し、隣のステージに落下した。 |
① 定常的に行わない作業は、重要作業項目が記載されるよう規程・基準類を構築し、教育する。 ② 重要作業項目がなぜ重要なのか、どのような危険が潜んでいるのか、手順書の説明時及び作業実施前の打合せ時に関係者に周知する。 ③ 関係者間で作業の目的と内容を確認し、報告、連絡、相談を徹底する。 ④ 現場責任者の役割と責任権限を明確にし、全ての現場監督者に教育する。 ⑤ 耐圧・気密試験について、計画から実行段階に至るまで、現場監督者、協力会社管理監督者に加え、保安主任者等が確認する。 ⑥ 重要・非定常な工事、作業は、製造部門の関与を強める。 |
事例 2-17 |
移替作業 |
産業廃棄物野積場に約半年間放置されたドラム缶の内容物を、移し替える作業を実施していたところ、ドラム缶内で爆発が起こり、1名が負傷した。 |
① 化学分析の実施 産業廃棄物として廃棄されるものは、事前に化学分析をし、その結果に基づき化学変化の可能性を検討し、危険性を排除する処置を講ずる。 ② 長期保存時の危険性の検討 ア 長期間保存する場合は事前検討を行い、保管中の化学変化により危険性を生じないようにする。 イ 前アの結果を受けて、廃棄物取扱い手順及び作業基準等を定め、作業員に周知徹底する。 |