消防特第49号

消防危第84号

平成26年3月31日

各都道府県消防防災主管部長

東京消防庁・各指定都市消防長 殿

消防庁特殊災害室長

危険物保安室長

 

石油コンビナート等における防災施設等の応急対策等に関する留意事項について(通知)

 

石油コンビナート等の災害を極限化するために設置することとされている防災施設等(消火用屋外給水施設、流出油等防止堤及び防油堤)についてはその多くが高度成長期に整備され長期間経過していること、東日本大震災の経験や南海トラフ巨大地震、首都直下地震等の発生の懸念があることに鑑み、地震時等においてもその機能を発揮する耐災害性の確保が重要となっています。そのため、平成25年度に「石油コンビナート等防災施設の耐災害性の確保のための経年劣化に伴う点検基準等のあり方に関する検討会」を開催し、経年劣化を考慮した点検基準や応急対策のあり方について検討を行ったところです。

今般、当該検討会の検討結果を踏まえ、石油コンビナート等における防災施設等の応急対策等に関する留意事項を下記のとおり取りまとめましたので、貴職におかれましては、このことに留意され、特定事業者等に対し、石油コンビナート等における防災対策の充実強化が図られるよう、引き続き適切な御指導をお願いするとともに、各都道府県におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知されるようお願いします。

なお、本通知は消防組織法(昭和22年法律第226)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。

 

 

第1 消火用屋外給水施設の応急対策について

消火用屋外給水施設については東日本大震災では比較的程度は軽いものの、地盤沈下による配管の沈下、貯水槽との接続部の損傷、埋設配管の損傷や加圧ポンプの設置場所の不等沈下や水没といった被害が見られており、今後発生が懸念される大規模地震等により消火用屋外給水施設が大きく損傷する場合も想定しておくことが必要である。このような場合において、速やかにその機能回復を図るために、消火用屋外給水施設を設置している事業所においては、事業所の実態を踏まえ次の例を参考に応急対策を検討するとともに、被害の状況に応じて必要となる資機材及びその保管・運用方法を防災規程に定めておく必要があること。

(1) 既に実施事例がある応急対策の例

ア 配管開口時にバンド巻きや補修材等による措置を行うこと。

イ 配管破損時に仕切板を設置することにより、フランジ部分での縁切りを行うこと。

ウ 隣接他社の給水配管から自社の給水配管へ仮設配管によるつなぎ込みを行うこと。

エ 加圧送水設備の電気系統への浸水対策や防水対策をあらかじめ計画しておくこと。

(2) 新たに考えられる応急対策の例

ア 海上から船舶のポンプを利用し、海水を供給すること。

イ 配管破損時、ゴム製フレキシブル配管等を代替として使用すること。

ウ 消防車両のポンプ、大容量泡放射システムのポンプや可搬ポンプにより消火用屋外給水施設に海水の供給を行うこと。

エ 海・河川・池等から取水できるようあらかじめ計画しておくこと。

オ 有事の際の必要人員や重機を外部から調達する契約等の整備を行うこと。

 

第2 防油堤の応急対策について

東日本大震災では、防油堤の目地部の一部に被害が発生したが、これらの被害を予防するためには、引き続き、「防油堤の漏えい防止措置等について」(平成10年3月20日付け消防危第32号)で示した可とう性材の設置を促進していくことが必要である。

一方で、東日本大震災において、地盤沈下により防油堤に大きな被害が発生した場合は、可とう性材でも対応できない場合が見受けられ、防油堤の被害を受けた事業所に対して行った応急対応に関するアンケート調査においては、漏えいを防止するための土のう等の設置に長時間を要していた。

地震等が発生した場合における施設に対する応急措置に関すること等について予防規程に定めることとされているが、事業所の実態を踏まえ次の例を参考に応急対策を検討するとともに、被害状況に応じて迅速かつ効果的に漏えいを防止するために必要となる応急対策用資機材及びその保管・運用方法を予防規程に定めておく必要があること。

(1) 既に実施事例がある応急対策の例

ア 土のうによる応急対策について

() 鉄筋コンクリート造の防油堤の目地部等に被害が発生した場合には、土のう単体では止液機能が不十分であるため、土のうに加え、必ず防水シート(自己粘着性)、不乾性パテ等を併用する必要があること。

() 土のうを運搬するための車両等をあらかじめ準備しておく必要があること。

() 土のうの設置に要する時間を短縮するため、一定量を袋詰めしておくなどの工夫が必要であること。なお、この際、土のう袋が劣化することや土が固まり変形追従性がなくなる場合があるため、定期的な詰替えに留意すること。

イ 大型土のうによる応急対策について

() 地盤の液状化等により防油堤の一部が大きく沈下した場合は、大型土のうにより対応する方法が有効と考えられること。

() 地盤条件が良好とは言い難い防油堤にあっては、大型土のうの配備や設置のためのクレーン等について、あらかじめ手配の手順等について確認しておく必要があること。

(2) 新たに考えられる応急対策の例

鉄筋コンクリート造の防油堤の目地部等に被害が発生した場合の応急対策として、防水シート(自己粘着性)や不乾性パテを用いることは、実験等から、軽量かつ施工性が優れ耐油性も一定時間の効果があり、単体で用いた場合においても高い止液性能を有すると評価されたが、当該資機材の活用にあたっては、以下の事項に留意すること。

ア 当該資機材を応急対策に用いる場合にあっては、耐油性、粘着性等についてあらかじめ確認しておくこと。

イ 当該資機材は迅速な応急対策を講ずる上で有効性は高いが、耐熱性等の配慮から、当該資機材による応急対策の後に、土のう等を設置する必要があること。

 

第3 防油堤の点検について

防油堤を含む屋外タンク貯蔵所等の定期点検については、「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」(平成3年5月28日付消防危第48号)により示しているところであるが、特に鉄筋コンクリート造の防油堤の目地部等の被害は、危険物の漏えい事故が発生した場合の被害拡大につながる。このことから、当該防油堤の壁体の温度による伸縮で目地部に隙間が生じ、止液板が劣化することがないことに留意し、大規模地震時等においても防油堤の機能を発揮できるように維持していく必要があること。

 

第4 流出油等防止堤の応急対策及び点検について

(1) 応急対策

流出油等防止堤の応急対策については、上記第2(1)及び(2)を準用すること。なお、流出油等防止堤を有する事業所においては事業所の実態を踏まえ、これらの応急対策の例を参考に検討するとともに、被害状況に応じて迅速かつ効果的に漏えいを防止するために必要となる応急対策用資機材及びその保管・運用方法を防災規程に定めておく必要があること。

(2) 点検

流出油等防止堤の点検については、特定防災施設等に対する定期点検の実施方法(昭和51年消防庁告示第8)によるとともに、上記第3に留意して実施すること。

inserted by FC2 system