消防特第63号

平成24年3月30日

関係道府県消防防災主管部長 殿

消防庁特殊災害室長

 

特定防災施設等及び防災資機材等に係る地震対策及び津波対策の推進について(通知)

 

東日本大震災では、石油コンビナート等特別防災区域の特定事業所において、危険物施設等の火災、漏えい、破損等が発生し、また、特定防災施設等及び防災資機材等の破損や流失等が生じました。特定防災施設等及び防災資機材等は特定事業所内の火災、漏えい等の災害の拡大防止のため備え付けられているものであり、地震又は津波が発生した後においても、その機能の維持が求められるものです。

消防庁では、「東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震・津波対策のあり方に係る検討会」を開催し、東日本大震災による特定防災施設等及び防災資機材等の被害状況を調査し、地震対策及び津波対策について検討を行いました。

検討結果を踏まえ、特定防災施設等及び防災資機材等の地震対策及び津波対策について下記のとおり取りまとめましたので、貴職におかれましては、このことに留意され、特定事業者に対し、特定防災施設等及び防災資機材等の地震対策及び津波対策の充実が図られるよう適切な御指導をお願いするとともに、貴道府県内の関係市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。

なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。

 

 

第1 地震対策及び津波対策に関する事項

1 地震対策の基本的な考え方

地震対策については、2つのレベルの地震の想定に対し、それぞれ次に掲げる措置を講ずること。

(1) 発生頻度の高い地震

発生頻度が高い地震に対しては、特定防災施設等、防災資機材等及び特定通路等の防災活動上重要な通路(以下「施設・資機材等」という。)の機能が維持されること。ただし、あらかじめ応急措置を準備しておき、当該応急措置により直ちに機能を回復できるのであれば、軽微な損傷の発生はさしつかえないこと。

(2) 甚大な被害をもたらす発生頻度が低い地震

甚大な被害をもたらす発生頻度が低い地震に対しては、機能が維持されなくてもやむを得ないが、地震後も継続して危険物等の貯蔵等が行われることとなることから、応急措置又は代替措置により、被害が発生する前と同程度の機能を速やかに回復することができるように、機能回復のための計画を策定しておくこと。

2 津波対策の基本的な考え方

津波対策については、災害対策基本法(昭和361115日法律第223)第2条第8号に規定する防災基本計画「第3編 津波災害対策編」に示されている2つのレベルの津波の想定に対し、それぞれ次に掲げる措置を講ずること。

(1) 最大クラスの津波に比べ発生頻度が高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波

「最大クラスの津波に比べ発生頻度が高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波」に対しては、大津波警報、津波警報及び津波注意報が解除され、瓦礫や汚泥等が除去され特定事業所内に入ることが可能となった後、施設・資機材等を直ちに復旧できるようにするために、施設・設備等の浸水対策を講ずるとともに、応急措置の準備をしておくこと。

(2) 発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波

「発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波」に対しては、応急措置又は代替措置により、速やかに被害が発生する前と同程度の機能を回復することができるように機能回復のための計画を策定しておくこと。

3 施設・資機材等別の対策例

施設・資機材等別の地震対策及び津波対策の具体的対策例を別紙に示す。

 

第2 地震対策及び津波対策の実施に関する事項

1 被害発生の評価に用いる地震及び津波

特定事業者は、施設・資機材等の被害発生の評価に際して、中央防災会議及び地震調査研究推進本部の資料や防災計画等を参考に、特定事業所の施設・資機材等に係る被害発生の評価に用いる地震及び津波を「第1 地震対策及び津波対策に関する事項」の地震及び津波の区分ごとに抽出すること。

なお、石油コンビナート等防災本部において、各石油コンビナート等特別防災区域の実態を踏まえ、特定事業者が抽出した施設・資機材等に係る被害発生の評価に用いる地震及び津波を統一することが望まれるものであること。

2 地震及び津波による施設・資機材等の被害発生の評価

特定事業者は、特定事業所において講じられている各種地震対策及び津波対策を考慮の上、「1 被害発生の評価に用いる地震及び津波」で抽出された地震及び津波について、地震にあっては地震動(震度)、津波にあっては浸水深(地盤面からの津波高さ)を用いて、特定事業所に設置されている施設・資機材等に係る被害発生の評価を行うこと。

3 地震対策及び津波対策の実施

特定事業者は、特定事業所に設置されている施設・資機材等について、「2 地震及び津波による施設・資機材等の被害発生の評価」の結果を踏まえ「第1 地震対策及び津波対策に関する事項」に従い地震対策及び津波対策を実施すること。

4 被害発生の評価並びに地震対策及び津波対策の実施の確認

特定事業者において施設・資機材等に係る被害発生の評価が行われ、この結果を踏まえて地震対策及び津波対策が実施されていることについて、消防機関が立入検査等の機会を活用し確認することが望まれるものであること。

 

第3 応急措置等実施時の留意事項

地震又は津波により生じた施設・資機材等の機能を回復するための応急措置や流出油等防止堤内滞水の排水作業等を行う際は、火災や漏えい等の災害発生の危険性等を考慮しつつ、応急措置等を行う者の安全を最優先し措置等を実施すること。

 

第4 評価結果と異なる被害発生への対応

「第2 地震対策及び津波対策の実施に関する事項」により、被害発生の評価を行い、被害が発生しない評価結果となった場合においても、評価結果と異なり被害が発生することも考えられることから、応急措置又は代替措置により、施設・資機材等の機能を速やかに回復することができるように機能回復のための計画を策定することが望まれるものであること。

 

別紙

 

施設・資機材等の地震対策及び津波対策例

 

1 応急措置等

(1) 流出油等防止堤

土嚢等の応急措置用資機材を事前に準備する。

(2) 消火用屋外給水施設

配管の環状化や水源の複数化等による被害の局限化を図ることを検討するとともに補修バンドや当て板等の応急措置用資機材を事前に準備する。加圧送水設備等の電気系統が浸水するおそれがある場合には、加圧送水設備等の高台設置等の浸水防止や電気系統の防水化等を実施する。

(3) 非常通報設備

ア 停電

停電が発生するおそれがある場合には、非常電源設備等や電源を内蔵した可搬式設備等を設置する。

イ 回線断線

通信回線等断線のおそれがある場合には、無線設備を設置する。

ウ 通信回線幅捧

通信回線が幅韓するおそれがある場合には、消防機関との直通回線、災害時優先電話や無線設備を設置する。

エ 浸水

浸水するおそれのある場合には、設備の高所設置、設備の防水化、可搬式の設備を用意し移動させる。なお、可搬式設備の持ち出しを行う際には、従業員の安全を最優先し、設備の持ち出し方法等について特定事業者において事前に定めておく。

(4) 特定通路等の防災活動上重要な通路

迂回可能な通路配置とするとともに、鉄板や砕石等の応急措置用資機材を事前に準備する。応急措置計画は、重機や人員等の調達方法、津波による堆積物の除去方法を事前に検討し定めておく。

(5) 消防自動車及びその他の防災資機材等

浸水がない場所を保管場所とする、若しくは保管場所を高くする。または、津波警報等発令時に高所-移動させる方法等について定めておく。

(6) オイルフェンス

通常時の使用を優先考慮し、保管場所を津波による影響の少ない場所とすることが可能であるか検討し、可能な場合は保管場所を移動する。

 

2 代替措置

(1) 消火用屋外給水施設

消防車両等を用いた代替方策を定めておく。

(2) 消防自動車及びその他の防災資機材等

他の地域の自衛防災組織等と任意で設置している消防自動車等の貸与や応援について、事前に協定を締結する等の代替車両等の調達方法について定めておく。

(3) オイルフェンス

オイルフェンスが破損し不足した場合の調達等の方法について計画を定めておく。

(4) オイルフェンス展張船、油回収船等

代替とすることができる船舶の確保について定めておく。

(5) 特定通路等の防災活動上重要な通路

準備した応急措置用資機材等が不足した場合に備え、調達方法について定めておく。

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