消防危第88号

平成24年3月28日

各都道府県消防防災主管部長

東京消防庁・各指定都市消防長 殿

消防庁危険物保安室長

 

浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクに係る技術基準の運用について

 

危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成23年政令第405)、危険物の規制に関する規則等の一部を改正する省令(平成23年総務省令第165)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示等の一部を改正する件(平成23年総務省告示第556)が平成231221日に公布され、その内容については「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について(通知)(平成231221日付け消防危第295号消防庁次長通知)により通知しているところです。

この度、浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクに係る技術基準の運用について、留意事項を下記のとおりとりまとめましたので、貴職におかれましては、下記事項に十分留意され、その運用に配慮されるとともに、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知されるようお願いします。

なお、本通知は消防組織法(昭和22年法律第226)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。

また、本通知中においては、法令名について次のとおり略称を用いましたので御承知おき願います。

消防法(昭和23年法律第186)・・・・・法

危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成23年政令第405)・・・・・改正政令

改正政令による改正後の危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306)・・・・・政令

危険物の規制に関する規則等の一部を改正する省令(平成23年総務省令第165)による改正後の危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55)・・・・・規則

危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示等の一部を改正する件(平成23年総務省告示第556)による改正後の危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99)・・・・・告示

第1 浮き蓋の構造及び設備に関する事項

1 一枚板構造及び二枚板構造の浮き蓋に関する事項

(1) 浮き蓋の浮力に関する事項

ア 一枚板構造及び二枚板構造の浮き蓋の浮力については、告示第4条の22第1号イ及びロに規定されている浮き屋根の技術基準の例によるものとされたこと(規則第22条の2第1号ロ及び第2号並びに告示第4条の23の2)。この場合において、浮き蓋が沈下しないものであることとは、同号イに規定する浮き蓋の破損状態における当該浮き蓋の最大喫水を計算し、貯蔵する危険物が、外周浮き部分の外リムと上板との交点を超えない状態をいうものであること。また、一枚板構造の浮き蓋の浮力の確認において、浮き蓋の最大喫水を求めるための計算は、「特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の構造等に係る運用指針について」(平成191019日付け消防危第242号。以下「242号通知」という。)別添1「浮き屋根の最大喫水を求めるための計算方法」により行うことができるものであること。

イ 平成2441日において現に法第11条第1項の規定により許可を受けて設置されている浮き蓋付特定屋外貯蔵タンク(以下「既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンク」という。)の一枚板構造の浮き蓋で、告示第4条の23の2に規定する浮き蓋の破損状態における当該浮き蓋の最大喫水を計算した結果、貯蔵する危険物の喫水が外周浮き部分の外リムの上端を超えることとなるものについては、平成36331(危険物の貯蔵及び取扱いを休止している浮き蓋付特定屋外タンク貯蔵所にあっては、危険物の貯蔵及び取扱いを再開する日の前日)までに、上記(1)アに示す技術基準に適合するよう改修すること。

(2) 浮き蓋の耐震強度に関する事項

ア 一枚板構造の浮き蓋を有する浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクのうち、次に掲げるものの浮き蓋は、液面揺動により損傷を生じない構造を有することとされたこと(規則第22条の2第1号ハ及び告示第4条の23の3)

① 容量が2kL以上のもの

② 容量が2kL未満であって、かつ、告示第2条の2に規定するHc(側板の最上端までの空間高さ)2m以上となるもの

イ 告示第4条の23の4に規定する浮き蓋の外周浮き部分に生じる応力の計算は、「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の施行について」(平成17114日付け消防危第14)に示す方法により行うことができるものであること。なお、外周浮き部分に生じる応力の算出にあたり、既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクの一枚板構造の浮き蓋の板厚については、「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成171219日付け消防危第295)問1に示されている方法により測定することとして差し支えないこと。

ウ 既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクで告示第4条の23の3に規定するものの浮き蓋のうち、告示第4条の23の4に規定する外周浮き部分に生じる応力が材料の規格最小降伏点又は0.2%耐力の90%を超えるものについては、平成36331(危険物の貯蔵及び取扱いを休止している浮き蓋付特定屋外タンク貯蔵所にあっては、危険物の貯蔵及び取扱いを再開する日の前日)までに、所定の強度が確保されるよう改修すること。

エ 告示第4条の23の5に規定する浮き蓋の溶接方法については、「特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根の改修等について」(平成19328日付け消防危第64号。以下「64号通知」という。)記1を準用するものであること。

オ 既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクで告示第4条の23の3に規定するものの浮き蓋のうち、告示第4条の23の5に規定する浮き蓋の溶接方法が64号通知の記1に示す方法によらないものについては、平成36331(危険物の貯蔵及び取扱いを休止している浮き蓋付特定屋外タンク貯蔵所にあっては、危険物の貯蔵及び取扱いを再開する日の前日)までに、当該溶接部を改修すること。

(3) 浮き蓋のマンホールの蓋の液密構造について

告示第4条の23の6の規定により、浮き蓋のマンホールの蓋は、告示第4条の23の2に規定する浮き蓋の破損による当該浮き蓋の傾斜状態において危険物に浸かる場合には、当該危険物が室内に浸入しない構造(以下「液密構造」という。)とする必要があるが、液密構造であることの確認は、242号通知別添2「液密構造の確認方法」により行うことができるものであること。

(4) その他

告示第4条の23の3に規定する浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクの浮き蓋に係る変更のうち、告示第4条の23の2、告示第4条の23の4及び告示第4条の23の5の規定に係る変更については、タンク本体の変更に該当するものとして取り扱うものであること。

2 簡易フロート型の浮き蓋に関する事項

(1) 共通事項

ア フロートチューブ全体で担保すべき浮力は、浮き蓋の総重量の2倍以上であることとされたこと(告示第4条の23の7第1号)。また、フロートチューブのうち2本が破損した場合における浮き蓋の残存浮力が、浮き蓋の総重量以上であることとされたこと(告示第4条の23の7第2号)。なお、浮力計算にあたり、貯蔵する危険物の比重が0.7以上である場合は、浮力計算に使用する比重として0.7を用いることとされたこと(告示第4条の23の7第3号)

イ フロートチューブ相互の接続箇所は回転性を有する構造とすることとされたこと(規則第22条の2第3号ロ)。なお、回転性を有する構造としては、ボルト接合により回転変位を逃がす構造についてその有効性が確認されているものであること。

(2) ステンレス製以外の簡易フロート型の浮き蓋に関する事項

ア 告示第4条の20第2項第3号に規定する長周期地震動に係る地域特性に応じた補正係数ν51.0を超える浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクで、かつ、内径が30m未満のものの簡易フロート型の浮き蓋のフロートチューブは、液面揺動により発生する最大ひずみを考慮した結果、その長さを6m以下にすることとされたこと(規則第22条の2第4号イ及び告示第4条の23の8)

イ ステンレス製以外の簡易フロート型の浮き蓋としては、アルミニウム製のものが確認されているが、アルミニウムは溶接により強度が劣化するものがあることから、アルミニウム製の簡易フロート型の浮き蓋については、フロートチューブ相互を溶接により接合しないこととされたこと(規則第22条の2第4号ロ)

3 その他の事項

(1) パン型及びバルクヘッド型の浮き蓋については、浮力性能及び耐震性能共に確保できない構造であることから、平成2441日以降はパン型及びバルクヘッド型の浮き蓋を有する浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクを新たに設置することができないものであるとともに、既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクのうちパン型及びバルクヘッド型の浮き蓋については、平成36331(危険物の貯蔵及び取扱いを休止している浮き蓋付特定屋外タンク貯蔵所にあっては、危険物の貯蔵及び取扱いを再開する日の前日)までに、他の構造の浮き蓋に改修すること。

(2) ハニカム型の浮き蓋については、政令第11条第2項第2号及び第3号並びに規則第22条の2第3号(ロを除く。)の規定に適合し、かつ、ハニカムパネル相互の接続部分に係る耐震強度が十分であることが有限要素法等の適切な方法によって確認された場合にあっては、政令第23条を適用してその設置を認めて差し支えないこと。

(3) 政令第11条第2項第1号に規定する技術基準に適合しない既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクについては、危険物施設における地震対策が急務であることに鑑み、当該タンクの開放等の機会をとらえ、可能な限り早期に技術基準に適合するよう改修を進めることが望ましいこと。

(4) 既設の浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクのうち、窒素ガス等の不活性ガスを充填しているもの又は引火点が40度以上の液体の危険物を貯蔵し又は取り扱うもので、かつ、当該タンク内に滞留した可燃性の蒸気を検知するための設備を設けているものについては、政令第11条第2項第1号に規定された技術基準を適用しないとされたこと(改正政令附則第10条第1項)

第2 可燃性蒸気の排出設備に関する事項

浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクには、可燃性蒸気を屋外に有効に排出するための設備を設けることとされたこと(政令第11条第2項第2号)。なお、当該設備には、次に掲げる特別通気口及び固定屋根の中央部に通気口が該当するものであること。

1 特別通気口に関する事項

特別通気口は、最高液位時の浮き蓋外周シールより上部の側板又は側板近傍の固定屋根上に設けること。その個数は、標準サイズ(300mm、長さ600mm)の場合、別表に示す値以上とし、原則として等間隔に設けるものであること。

また、通気口開口部の相当直径(4/?p)が標準サイズ(0.4)を超える場合は、次の式によって個数を算出するものであること。ただし、最小設置個数は4個とすること。

N:必要な設置個数

s:別表による標準サイズの設置個数

S:通気口の開口部断面積()

?p:通気口の浸辺長()

なお、不活性ガスにより常時シールするタンクにあっては、特別通気口を設置しないこととされたこと。

※ 平成29年消防危第104号参照

2 固定屋根の中央部に設ける通気口に関する事項

固定屋根の中央部に設ける通気口のサイズは、呼び径が250mm以上であること。ただし、気相部を不活性ガスにより常時シールするものについては、当該通気口に代えて規則第20条第1項第2号に規定する大気弁付通気管を設置することが望ましいこと。

第3 点検設備に関する事項

浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクは浮き蓋の状況が外部からは確認が難しく、異常が発生しても覚知が遅れやすいこと、また異常が発生した後の対応を安全に行うために浮き蓋の傾斜及び損傷状況を詳細に確認する必要があることから、固定屋根上に点検口を設けることとされたこと。ただし、窒素ガス等の不活性ガスにより常時シールするタンクにおいては、点検口を設置しないこととされたこと(政令第11条第2項第3号)

また、浮き蓋に係る点検を確実に行うためには、点検口から浮き蓋の全体を視認することが必要だが、一つの点検口から確認できる浮き蓋の範囲は、タンクの直径、高さ、点検口の構造や内部の明るさによって異なることから、浮き蓋の全体が視認できるよう点検口(又は固定屋根部の特別通気口であって内部の点検が容易にできる構造のもの)を複数設けることが必要であること。

第4 噴き上げ防止措置に関する事項

1 噴き上げ防止措置が必要な浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクに関する事項

配管内に気体が滞留するおそれがあり、かつ、簡易フロート型の浮き蓋を有する浮き蓋付特定屋外貯蔵タンクの配管には、噴き上げを防止するための設備を設けることとされたこと(政令第11条第2項第4号)。なお、配管内に気体が滞留するおそれがある場合としては、危険物の受入元が船舶及びタンクローリーである場合や、危険物が配管内で揮発しガス化する場合が考えられること。

2 噴き上げ防止措置として有効な設備に関する事項

規則第22条の2の2第1号に規定する「配管内に滞留した気体がタンク内に流入することを防止するための設備」としては、配管に設置される空気分離器及び空気抜弁が有効な設備であること。ただし、空気抜弁をもって当該配管内に滞留した気体がタンク内に流入することを防止するための設備とする場合は、定期的に空気抜き作業を実施する必要があること。

また、規則第22条の2の2第2号に規定する「配管内に滞留した気体がタンク内に流入するものとした場合において当該気体を分散させるための設備」としては、ディフューザーが有効な設備であること。ディフューザーの配管側端部においては配管がディフューザー内部に差し込まれた配置であるとともに、ディフューザーのタンク中心側端部は閉鎖された構造とすることが望ましいこと。

なお、危険物の受入流速を低下させることは、静電気防止対策としては有効であるものの、噴き上げ防止対策としては有効性が確認されていないものであること。

第5 浮き蓋の漏れ試験に関する事項

浮き蓋の溶接部は、真空試験、加圧漏れ試験、浸透液漏れ試験等の試験によって漏れがないものでなければならないとされたこと(規則第20条の9)。なお、簡易フロート型のフロートチューブで、フロートチューブの製作工場等においてあらかじめ溶接部に係る漏れ試験又は気密試験が実施されているものにあってはこの限りでないこと。

 

 

別表 標準サイズの特別通気口の設置個数(S)

タンク高さ()

タンク内径()

設置個数(S)

20

21

22

23

24

25

10

4

4

4

4

4

4

12

4

4

4

4

4

6

14

6

6

6

6

6

6

16

6

6

6

6

6

6

18

8

8

8

8

8

8

20

8

8

8

8

10

10

22

10

10

10

10

10

12

24

10

10

10

10

12

12

26

10

10

10

10

12

12

28

10

10

12

12

12

14

30

12

12

14

14

14

14

32

12

14

14

16

16

16

34

14

16

16

18

18

18

36

16

16

18

20

20

20

38

18

18

20

22

22

22

40

20

20

22

24

24

26

42

22

22

24

24

26

28

44

24

24

26

26

30

30

46

26

26

28

30

32

34

48

28

28

30

32

34

36

50

30

32

32

34

36

40

52

32

34

36

36

38

42

54

34

36

38

40

42

46

56

38

38

40

42

44

48

58

40

42

44

46

48

50

60

42

44

46

48

50

52

※ タンク高さが20m未満のものについては、20mの時の設置個数を用いる。

以上

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