消防危第93号

平成21年5月26日

各都道府県消防防災主管部長

東京消防庁・各指定都市消防長 殿

消防庁危険物保安室長

 

危険物施設における事故防止の徹底について

 

危険物施設の事故防止については、日頃から御尽力を願っているところですが、昨年57日、愛知県大府市の危険物一般取扱所において危険物第一類(硝酸ナトリウム)を取り扱う作業中に何らかの原因で爆発し、作業員1名が死亡する事故が発生しました。

これについて、愛知県及び大府市より別紙のとおり報告を受けましたので、情報提供します。

同種事故の再発を防止するため、貴職におかれましては危険物施設の関係者に対し、必要な指導を適時適切に行っていただくとともに、都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨情報の提供をお願いします。

 

別紙

21消保第539号 

平成21年5月11日

 

消防庁危険物保安室長

愛知県防災局長

 

危険物施設における事故報告及び周知について(依頼)

 

平成2057日に本件大府市内の危険物施設で発生した事故について、平成21424日付け大予第260号で大府市長から別添のとおり事故報告及び注意喚起の指導依頼がありました。

当該事故は、主として危険物第一類の硝酸ナトリウムを熱溶媒として使用し、アルミニウム部品の品質を検査するブリスタ試験機で発生したもので、危険物の未把握及び危険性の認識欠如に端を発するものと考えられ、県として県内で同種の事故が生じないよう平成20520日付け20消保第500号で別紙のとおり関係市町長等に対して通知したところです。

事故原因調査については、平成21212日付け消防研第24号で消防大学校消防研究センター所長から大阪府消防本部消防庁あてに報告された技術支援結果報告書で、浸漬ヒーターの電気スパーク等で引き起こされる硝酸ナトリウムとアルミニウムの急激な反応が、爆発の前駆反応となる可能性があると推定されました。

つきましては、当該調査結果を基に本県のみならず全国でも同種の事故が発生しないよう消防庁として各都道府県等関係機関に対して周知等していだたきますようお願いたします。

 

 

21大予第260号

平成21年4月24日

 

愛知県防災局長 殿

 

大府市長

 

危険物施設における事故報告及び周知について(依頼)

 

平成2057日、別添報告のとおり、当市管内の危険物一般取扱所で危険物第1類の硝酸ナトリウムを処理剤としてアルミニウム部品の品質検査をするブリスター試験機で爆発事故が発生し、不幸にも1名の当該事業所の従業員の方がお亡くなりになるという結果となりました。

このことを鑑みて、同種の検査機器を取り扱う事業所、関係消防本部への当該事故に係る危険性の周知を図る必要性を感じております。

つきましては、愛知県はもとより全国的な総務省消防庁を通じて周知していただきますようお願いいたします。

 

 

別添報告

 

㈱豊田自動織機大府工場火災(爆発)事故概要

 

1 発生日時

平成2057() 518分ころ

2 発生事業所

愛知県大府市江端町1丁目1番地

㈱豊田自動織機大府工場(803工場)

3 建物の概要(危険物施設)

耐火建築物 地上1階建て

建築面積 7,7562、延べ床面積7,7562

4 危険物施設としての概要

製造所等の別 取扱所

取扱所の区分 危険物一般取扱所(主として油圧作動油や切削油の取扱う)

設置許可 平成12124

変更許可 平成15310

許可の種別 第4類

品名 第1石油類 250L  第2石油類 27L  第3石油類 40

最大数量 第3石油類(水溶性) 1228L  第4石油類 3147

指定数量の倍数 2.13

5 事故の概要

当該事業所が、所有するブリスタ試験機を使用してアルミダイキャスト製ピストンの仕上げ状況の試験後、何らかの原因で硝酸ナトリウム熔液槽から発火し、溶液槽内で燃焼後、爆発(爆発)を引き起こしたもの。

※ ブリスタ試験機

530℃に加熱して溶解した処理剤(硝酸ナトリウム)にアルミダイカスト製品を約3分間浸透し、表面に近い製品中に含まれた空気やガスの有無を試験する装置。

6 死傷者の発生状況

死者1(24歳・男性) 同日733分脂肪 (救急搬送)

(頭髪消失、眼球・顔面・気道熱傷、左前腕・右大腿・右下腿の開放性複雑骨折)

軽傷1(24歳・男性) 右肩打撲(救急要請はなく自己にて受信)

7 推察される事故原因

① 水が混入したことによる水蒸気爆発。

② 530℃の硝酸ナトリウム溶液槽内に可燃物が混入し着火後、温度上昇により爆発。

③ ブリスタ試験機のヒーターの温度センサーの不良で、600℃以上となり急激に反応し、着火後爆発。

④ シースヒーターの金属パイプの腐食から、熔液槽内でスパークし、硝酸ナトリウム熔液が、アルミと反応し燃焼したことで、急激な温度上昇により槽内上部の空気が膨張し、試験機が爆発したもの。

⑤ シースヒーターの金属パイプの腐食から、溶液槽内でスパークし、硝酸ナトリウム熔液が、アルミと反応し燃焼後爆発したもの。

以上(平成21212日付け消防研第24号 消防大学校消防研究センター所長からの「火災の原因の調査に係る技術支援結果報告書」を参照)

なお、当該事案の当該消防本部の火災判定理由書の結論では、上記④、⑤の可能性が高いが人的要因等が不足すること、各種実験によっても確定的な結果が得られなかったこと等により、発火源、経過、着火物ともに不明とした。

8 消防活動の状況

公設消防機関・・・・・消防車両5

※ 当該事業所からの第1次の出動依頼は、救急出動依頼であり消防は周辺の一般住宅からの通報による。

9 違反処理、再発防止策

① 事故発生一般取扱所に消防法第12条第3項による緊急使用停止命令(571017分口頭、58日命令書交付)

② 630日立入検査

③ 消防法第11条第1項違反により警告書公布 ※参照

④ 514日付けで試験機製造メーカーが取引先(試験機販売先)に使用禁止と処理剤の販売停止文書送付

⑤ 事故発生事業所より爆発事故対策書の提出

⑥ 平成211月に試験機製造メーカーが取引先(試験機販売先)への自主回収についての検討

※ ㈱豊田自動織機大府工場の火災(爆発)事故の違反処理について

爆発事故を起こした803工場のブリスタ試験機の加熱材として使用していた物が危険物第1類であったことに鑑み、当該危険物は大府市長に無許可で取り扱われていたものである。このことは、消防法第11条第1項違反「製造所等の設置、位置、構造又は設備を変更する際に無許可で変更したもの」に該当するものであり、大府市火災予防査察違反処理規程別表(7)の1 製造所等の位置、構造、又は設備の無許可変更(法第11条第1項)となり、同表の措置欄の警告措置を行ったものであります。

inserted by FC2 system