消防危第48号

平成19年2月27日

廃止:平22144

各都道府県消防防災主管部長

東京消防庁・各指定都市消防長 殿

消防庁危険物保安室長

 

鋼製地下タンクの内面保護に係るFRPライニング施工に関する指針について

 

平成17年中に発生した危険物施設における漏えい事故は、統計を取り始めて以来過去最悪となっており、漏えい事故の発生原因では、物的要因としての腐食等劣化によるものが最も多くなっています。中でも地下タンクにおいては、腐食貫通孔から危険物が周辺土壌や河川等に流出するなどの被害が拡大することが懸念されます。

近年、既存の鋼製地下タンク内面の腐食・防食措置としてFRP(Fiber-Reinforced-Plastic)ライニング(以下「内面ライニング」といいます。)の技術が実用化されてきていますが、その施工が不適切な場合にはかえって腐食を進行させ、また、工事中に火災等の発生させるおそれがあることが考えられます。

つきましては、既存の鋼製地下タンクに内面ライニングを施工することについて、別添のとおり指針をとりまとめましたので通知します。

貴職におかれましては、本指針による運用に配慮いただくとともに、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。

なお、本通知中においては、法令名について次のとおり略称を用いましたのでご承知おきください。

危険物の規制に関する政令(昭和34926日政令第306)・・・政令

危険物の規制に関する規則(昭和34929日総理府令第55)・・・規則

危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和4951日自治省告示第99)・・・告示

 

別添

 

鋼製地下タンクの内面保護に係る内面ライニングの施工に関する指針

 

第1 内面ライニングの施工に関する事項

1 対象となる地下タンク

(1)に定める方法により内面を処理した状態において次の基準を満たす地下タンクに施工すること。

(1) 板厚

50㎝平方につき3点以上測定した場合において、鋼板の板厚が3.2㎜以上、かつ、設置時の板厚の75%以上であること。ただし、3.2㎜未満又は設置時の板厚の75%未満の値が測定された部分がある場合には、当該部分について10㎝平方につき3点以上測定し、すべての測定点において3.2㎜以上、かつ、設置時の板厚の75%以上であること。

(2) 気密性・耐圧

70kaの圧力で10分間行う不活性ガスを用いた圧力試験において、圧力の低下がないこと。

2 施工方法

(1) 地下タンク内面の処理

ア 地下タンク内面のクリーニング及び素地調整を行うこと。

イ 素地調整は、「橋梁塗装設計施工要領(首都高速道路厚生会)」に規定する素地調整2種以上とすること。

(2) 内面ライニングの成形

ア 内面ライニングに用いる樹脂及び強化材は、当該地下タンクに収納する危険物に対して劣化のおそれのないものとすること。

イ 内面ライニングに用いる樹脂及び強化材は、必要とされる品質が維持されたものであること。

ウ 内面ライニングの厚さは、2㎜以上とすること。

エ 成形方法は、ハンドレイアップ法、紫外線硬化樹脂貼付法その他の適切な方法とすること。

(3) 内面ライニングの確認

ライニングの成形後、内面ライニングについて次のとおり確認すること。

ア 施工状況

気泡、不純物の混入等の施工不良がないことを目視で確認すること。

イ 厚さ

膜厚計により内面ライニングの厚さが設計値以上であることを確認すること。

ウ ピンホールの有無

ピンホールテスターにより、ピンホールが無いことを確認すること。

(4) 作業者の知識及び技能

職業能力開発促進法に基づく「2級強化プラスチック成形技能士(手積み積層成形作業)」又はこれと同等以上の知識及び技能を有する者がライニングの成形及び確認を行うこと。

(5) 工事中の安全対策

内面ライニング施工は、地下タンクの内部の密閉空間において作業等を行うものであることから、可燃性蒸気の除去等火災や労働災害等の発生を防止するための措置を講ずること。

(6) その他

1及び2(1)から(5)までの事項を確実に実施するため、施工者は、次に掲げる事項につき、当該各号に定める基準に適合するマニュアルを整備しておくこと。

① 対象となる地下タンクの確認方法1に適合すること。

② 地下タンクの内面処理方法2(1)に適合すること。

③ 内面ライニングの成形方法2(2)に適合すること。

④ 施工後の内面ライニングの確認方法2(3)に適合すること。

⑤ 作業者の知識及び技能2(4)に適合すること。

⑥ 工事中の安全対策2(5)に適合すること。

 

3 その他

(1) 液面計の設置

地下タンクの内面に施工されたライニングを損傷させないようにするため、政令第13条第1項第8号の2に規定する危険物の量を自動的に表示する装置を設けること。

(2) 表示

内面ライニングを施工した地下タンクには、当該タンクに接続されている通気管等見やすい場所にシールの貼付等により次に掲げる事項を表示すること。

ア 内面ライニング施工者

イ 内面ライニング施工日

ウ 適応する危険物の種類

4 事務手続等

(1) 変更許可等

ア マンホールの取付け及び液面計の設置は変更許可申請が必要であること。

イ 内面ライニングを施工する場合は、変更許可申請の有無にかかわらず、2に掲げる事項に適合することを確認するための資料を提出させ、内容を確認されたいこと。

(2) 完成検査前検査

マンホールの取付けを行う場合については、内面処理した後から内面ライニングを成形する前までの間に完成検査前検査が必要であること。この場合において、水圧試験に代えて、不活性ガス加圧試験とすることができること。

(3) 完成検査等

ア マンホールの取付け及び液面計の設置は完成検査が必要であること。

イ 完成検査の有無にかかわらず、2及び3(2)に掲げる事項についても併せて確認されたいこと。

 

第2 内面ライニングの維持管理に関する事項

内面ライニングを施工したすべての地下タンクについて、施工した日から10年を超えない日までの間に1回以上タンクを開放し、次に掲げる事項を確認することが望ましいこと。

(1) 内面ライニングに歪み、ふくれ、亀裂、損傷、孔等の異常がないこと。

(2) 第1 1(1)に規定する方法により測定した地下タンクの板厚が3.2㎜以上、かつ、設置時の板厚の75%以上であること又は規則第23条に規定する基準に適合していること。ただし、次のア又はイにより確認している場合については、確認を要さないものとして差し支えないこと。

ア 内面ライニング施工にあわせて地下タンク及びこれに接続されている地下配管に告示第4条に規定する方法により電気防食措置を講じ、防食電圧・電流を定期的に確認している場合

イ 地下タンクの対地電位を1年に1回以上測定しており、この電位が-500mV以下であることを確認している場合

inserted by FC2 system