消防危第116号

平成9年12月12日

都道府県消防主管部長 殿

消防庁危険物規制課長

 

危険物運搬車両の事故防止等対策の実施について(通知)

 

移動タンク貯蔵所の事故防止については、「移動タンク貯蔵所の移送中における事故防止に係る指導について」(平成988日付け消防危第84号、消防庁危険物規制課長通知)により通知したところであるが、その後、関係省庁等による「危険物運搬車両の事故防止等対策会議」が設置され、今般、別添1のとおり「危険物運搬車両の事故防止等対策についての申合せ」が決定され、これらの車両に係る事故防止を積極的に推進することとされたところである。

ついては、危険物運搬車両(毒物、高圧ガス、危険物等の危険有害な物質を運搬する車両及びこれらを移送するタンクローリーをいう。以下同じ。)による事故防止と事故処理対策等について、下記事項に留意の上必要な措置を講じることとされたい。

また、貴管下市町村に対してもこの旨示達され、よろしく御指導願いたい。

 

 

1 法令遵守の徹底

危険物の運搬車両及び移動タンク貯蔵所の所有者、管理者又は占有者及び運転者に対し、消防法第16条に規定する運搬の基準、同法第16条の2に規定する移送の基準等の遵守の徹底を図ること。

 

2 関係行政機関等及び関係民間団体等の協力体制の整備

(1) 国においては、消防庁と警察庁、厚生省、通商産業省、運輸省、建設省及び日本道路公団からなる連絡会議を開催し、危険物運搬車両による事故防止と事故処理対策等について必要な施策を推進することとしたこと。

(2) 都道府県においては、都道府県ごとに、都道府県(消防主管部、衛生主管部)、都道府県警察、国の地方出先機関、代表の消防本部、道路管理者、関係民間団体等が、「危険物運搬車両の事故防止等対策協議会(仮称)」等を設置し、危険物運搬車両の交通事故発生時における当該都道府県レベルの行政機関等の相互の連絡体制及び作業分担について協議するとともに、現場対応マニュアルを作成し、これに基づき、当該都道府県レベルの行政機関等の合同訓練を行い、危険物運搬車両の事故発生時の対応に備えること。

 

3 イエローカードの普及等

(1) 危険物運搬車両の運転者に対し、イエローカードの携行を指導すること。

なお、消防庁では、()日本化学工業協会に対し、イエローカードの的確な運用について要請してきたところであるが、その結果、当該協会から加入事業者に対し、「移動タンク貯蔵所等の移送中の事故防止について」を通知しているので、参考までにその写しを添付する。()

(2) イエローカードは、事故発生時の応急措置を記載した書面であるので、安全管理に十分配意しつつ迅速、かつ的確な対応が図れるよう、事故発生現場で活動する消防職員等に対し、その内容を周知させること。

 

4 危険物等のデータベースの構築等

現在、消防庁において、危険物運搬車両による事故が発生した場合、早期に対策を実施するために、危険物の性質、特性及び取扱い要領等について、データベース化するとともに、必要な時に現場から容易に検索できるシステム(「危険物災害等情報支援システム(仮称))について検討中である。この内容等については、追って通知する予定であるので、念のため申し添える。

 

別添1

 

危険物運搬車両の事故防止等対策についての申合せ

 

平成9年12月12日

警察庁交通局都市交通対策課長

警察庁生活安全局生活環境課生活経済対策室長

厚生省医薬安全局安全対策課長

通商産業省環境立地局保安課長

通商産業省基礎産業局総務課化学物質総合安全管理推進室長

運輸省自動車交通局貨物課長

運輸省自動車交通局技術安全部保安・環境課長

建設省道路局道路交通管理課長

建設省道路局高速国道課長

消防庁危険物規制課長

日本道路公団保全交通部長

 

本年8月、静岡県内の東名高速道路において発生したタンクローリーの単独横転事故では、積載していた危険物が流出し、住民等に不安を引き起こした。また、積載していた危険物の特定、当該危険物の取扱い要領の確認、除去等のための資材の確保、横転タンクローリーのタンク内の危険物の積替え車両の確保及び現場路面の清掃等により、事故現場道路の復旧に多くの時間を要したため、約15時間(上り線は約10時間)にわたって通行止めが行われ、我が国産業経済活動等の大動脈である東名高速道路に多大な影響を与えることとなった。

国内における危険有害な物質(以下「危険物」という。)の輸送は、タンクローリーやトラックによる陸上輸送が多く行われている。これらの車両による事故は、軽微な事故を含めれば事故の数そのものについては、一般の車両同様一般道におけるものが多いが、特に、高速走行を行う高速道路で事故が起きると、タンクや運搬容器への被害が大きくなる可能性が高く、危険物の流出等により、社会的な影響の大きい事故につながる可能性が高い。

したがって、高速道路におけるタンクローリーやトラックによる危険物の輸送時における事故を中心にその対応が求められている。

また、最近においても、高速道路において危険物運搬車両の事故は少なからず発生している。

以上を踏まえ、危険物運搬車両による事故防止と迅速な事故処理対策等を推進するため、警察庁、厚生省、通商産業省、運輸省、建設省及び消防庁の関係所属の課長レベル及び日本道路公団保全交通部長からなる「危険物運搬車両の事故防止等対策会議」を開催したところである。

今後は、同会議に参画している関係行政機関等(以下「関係行政機関等」という。)の緊密な連絡のもとに、次の施策を積極的に推進することとする。

また、関係行政機関等は、所管団体に対し、協力を求めるため周知徹底を図ることとする。

 

1 関係行政機関等、関係民間団体等の協力体制の整備

国においては、今後、警察庁、厚生省、通商産業省、運輸省、建設省及び消防庁の関係所属の課長レベル並びに日本道路公団保全交通部長からなる連絡会議を開催し、本申し合せの進捗状況をフォローし、それを踏まえ見直しを行う等により、危険物運搬車両による事故防止と事故処理対策等について必要な施策を推進する。

また、都道府県ごとに、都道府県(衛生主管部、消防主管部)、都道府県警察、国の地方出先機関、代表の消防本部、道路管理者、関係民間団体等の協力を得て、「危険物運搬車両の事故防止等対策協議会(仮称)」を設置し、危険物運搬車両の交通事故発生時における当該都道府県レベルの行政機関等の相互の連絡体制、作業分担等について協議するとともに、現場対応マニュアルを作成し、これに基づき、当該都道府県レベルの行政機関等での合同訓練を行い、危険物運搬車両の交通事故発生時の対応に備える。

 

2 事故防止対策の推進

(1) 警察庁においては、運転者等に対する交通安全の啓発、関係法令の遵守等についての指導の徹底を図るとともに、都道府県警察と都道府県高速道路交通安全協議会が連携して行う交通安全街頭活動、広報活動等の高速道路における交通安全意識の高揚と交通事故防止のための活動を積極的に推進する。また、最近における危険物運搬車両の事故の発生実態を踏まえ、車両の安全運行に係る道路交通法等違反等に重点を置き、危険物運搬車両に対する指導取締りを強化する。

さらに、トレーラ、大型貨物自動車等の通行区分規制違反車両や最高速度違反等についても、指導取締りの強化を図っていく。

(2) 厚生省、通商産業省及び消防庁においては、それぞれ所管する法令に基づき、危険物製造事業者等に対して安全確保の指導の徹底を図る。

(3) 運輸省においては、危険物運搬事業者に対し、危険物運搬車両の事故防止のため、適正な運行計画の作成及びその確保等運行管理の徹底を図るとともに、運転者等への交通安全の啓発、関係法令の遵守及び危険物の取扱いについての指導の徹底を図るよう指導する。また、貨物自動車運送事業者により構成される団体が、危険物運搬車両を含む営業用トラックの安全走行確保と事故防止を目的に、高速道路上において自主的なパトロールを行っているが、今後ともパトロールの積極的な推進について指導する。

(4) 建設省及び日本道路公団等の道路管理者においては、危険物運搬車両等に対する交通安全啓発活動を推進するとともに、警察等関係機関と密接な連携を取りつつ、車両制限令違反車両の指導取締り等、規制実施トンネルにおける道路法違反車両の指導取締り等の強化を図る。

 

3 危険物運搬車両の事故発生時の対応の強化

(1) イエローカードの普及等

()日本化学工業協会においては、通商産業省からの促進要請も踏まえ、自ら推進しているレスポンシブルケア(化学物質の総合安全のための事業者による自主的な活動)の一環として、危険物輸送中の事故発生時に運転者等が、応急措置、正確な対応を採ることができるようにするための緊急連絡先等を記載した「イエローカード」の交付及び携行の普及に努めるとともに、8月の事故の問題点を踏まえ、事故時に輸送している製品に係るイエローカードを特定できるように運用の改善を図り、周知しているところである。

このような自主的な取組みは、化学製品が多様化する中で必要不可欠であり、歓迎されるものである。

厚生省及び消防庁は、関係法令の遵守と適切な運用を推進する立場から、通商産業省は、化学工業品の生産から流通・消費の所管及びレスポンシブルケア推進の立場から、運輸省は、貨物自動車運送事業を所管している立場から、イエローカードのより一層の普及を図るため、引き続き民間関係団体に対する支援、事業者に対するイエローカードの啓蒙普及を行うとともに、関係行政機関等においては、事故発生時に迅速な対応ができるよう組織内におけるイエローカードの周知徹底に努める。

また、通商産業省は、化学品審議会において、イエローカードの一層の普及の方策について検討するとともに、関係行政機関等の意見を踏まえ、様式、記載事項の変更等イエローカードの改善について()日本化学工業協会に検討するよう依頼する。

(2) 危険物等のデータベースの構築等

危険物運搬車両による事故が発生した場合、早期に対策を実施するために、危険物の性質、特性及び取扱い要領等について、データベース化するとともに、必要な時にどこからでも容易に検索できるシステムを構築することは有効である。

現在、このシステム化については、関係行政機関等において検討しているところであるので、関係行政機関等が連絡を取り合い、データベースの構築等に協力して、よりよりシステムを整備するよう努める。

また、事故発生時における処理資材の調達方法、危険物積替車両の保有状況等についても、関係行政機関等が連携して検討を行う。

 

別添2

 

平成9年9月16日

会員各位

()日本化学工業協会

会長  村田 一

 

移動タンク貯蔵所等の移送中の事故防止について

 

85日東名高速道路において脂肪酸クロライドを積載したローリー車が事故を起こし、社会的に大きな影響を与えましたが、この事故に関し消防庁危険物規制課より別紙のような要請がありました。これは同種事故を防止するための留意事項を示したものですが、これらの徹底と並行して当協会の「物流安全管理指針」に沿った下記の項目についても見直しの上必要な措置をとられるようお願い申し上げます。

 

 

会員各位におかれては前述の指針に従ってイエロー・カードの運転者への携行に努めているところですが、より一層の携行の徹底化を図るとともに次の点を確認されたい。

 

1 物流安全に関する周知、指導

社内のみならず輸送事業者に対しても託送する化学品の危険性の周知、安全運転の指導を行うこと。

 

2 イエロー・カードの作成上の留意点

1) 特性表示については異常・事故等を想定し危険性情報を出来るだけ多く提供する。

例えば水と反応する場合の危険性も表示すること。

その他の記載事項についても製造者として危険性が予見できるものは特記事項欄も利用して記入すること。

2) イエロー・カードの作成にさいしては水又は空気と反応して毒性・腐食性の物質並びに加熱されて毒性・腐食性の物質を生じる物質については必ず記載すること。

上記物質についてイエロー・カードを未作成・未記入の場合は早急に作成されたい。

3) 緊急連絡先の荷送会社(荷主)24時間対応可能な事業所等とする。原則的には輸送時の化学品の所有権のある会社とするが専門的な対応が困難な場合は製造元や荷受人に緊急連絡先を委託するなどの体制を確立しておく。

 

3 イエロー・カードの効果的な運用

1) 輸送している化学品以外のイエロー・カードは携行させないこと。納品書等とイエロー・カードをセットにする等の方法で徹底をはかる。

2) 品名についてはイエロー・カードへの記載と車両への表示等とを対応させる。

例えば総称名でイエロー・カードを作成している場合( )書き等で理解し易いようにする。

3) 携行しているイエロー・カードは運転席の見易い場所に置くとともに事故発生時には現場に到着した消防職員警察官又は道路公団職員等に速やかに提出し、必要な情報を提供すること。

 

4 緊急時の対応体制

事業者特に荷送会社(荷主)は事故等の緊急時を想定し要員、資材等の措置体制を整備すること。なおその有効性について必要により訓練等で、確認することが望まれる。

なお危険物輸送部会では物流安全管理実施要領(仮称)を作成している他、情報提供等対応策を検討中であり一層のご協力をお願い致します。

 

以上

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