消防危第81号
平成9年7月15日
各都道府県消防主管部長 殿
消防庁危険物規制課長
都市ガス・液化石油ガス及び毒劇物等による事故状況について(通知)
都市ガス・液化石油ガス及び毒劇物等による事故(以下「ガス事故等」という。)の防止については、日頃からご配慮願っているところであるが、この度、例年調査をお願いしている標記について、平成8年中の調査結果を別添資料のとおり取りまとめたので送付する。
本調査によるガス事故等の状況を十分に考慮し、今後ともガス事故等の防止に配慮願いたい。
なお、貴管下市町村にもこの旨示達されたい。
別添 都市ガス・液化石油ガス及び毒劇物による事故に関する統計表
平成9年7月
消防庁危険物規制課
平成8年中の都市ガス及び液化石油ガスによる事故の概要
1 事故の発生状況
(1) 事故の発生件数
発生件数は前年に比べ増加(阪神・淡路大震災によるものを除く)
平成8年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスによる事故(以下「ガス事故」という。)で消防機関が出場したものの件数は第1表のとおりである。
ガス事故の総件数は1,751件で、阪神・淡路大震災(以下「大震災」という。)によるものを除いた前年の事故件数と比べ120件(7.4%)の増加となっている。
ガスの種別ごとの事故件数をみると、都市ガスに係るものが1,042件で前年に比べ76件(7.9%)の増加、液化石油ガスに係るものが709件で前年に比べ44件(6.6%)の増加となっている(いずれも前年の大震災によるものを除く)。
第1表 平成8年中のガス事故発生件数
年・増減 区分 |
平成8年 (イ) |
平成7年 (ロ) |
増減 (イ)-(ロ) (ハ) |
増減率 (ハ)/(ロ)×100 (%) |
件数 |
1,751 |
2,929 (1,631) |
-1,178 (120) |
-40.2 (7.4) |
都市ガス |
1,042 |
2,237 (966) |
-1,195 (76) |
-53.4 (7.9) |
液化石油ガス |
709 |
692 (665) |
17 (44) |
2.5 (6.6) |
注) ( )内の数値は阪神・淡路大震災による事故を除いた数値である。
発生総件数は5年前の95%
平成4年からの発生件数の推移をみると第1図のとおりである。大震災によるものを除くガス事故の総件数は年々減少していたが、平成8年は増加に転じた。
ガス事故の総件数、都市ガス事故、液化石油ガス事故は、それぞれ平成4 年の95.1%、104.2%、84.2%となっている。
漏えいによる事故が約8割
ガス事故を態様別にみると第2図のとおりであり、漏えい事故が81.2%、爆発・火災事故が18.8%である。
ガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が90.0%、爆発・火災事故が10.0%に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が68.3%、爆発・火災事故が31.7%である。
漏えい、爆発・火災事故は前年に比べともに増加
平成4 年からの態様別の発生状況を見ると第2 表のとおりである。大震災によるものを除きガス事故全体に占める漏えい事故は約8割で、残りの約2割が爆発・火災事故であり、過去5年間ほぼ同様の傾向を示しているが、平成8年においては漏えい、爆発・火災事故は前年に比べ増加している。
ガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が約9 割を占めているのに対し、液化石油ガスでは漏えい事故が約7 割で、残りの約3割が爆発・火災事故である。
第2 表 態様別の発生状況の推移
区分 年 |
都市ガス |
液化石油ガス |
計 |
|||
漏えい |
爆発・火災 |
漏えい |
爆発・火災 |
漏えい |
爆発・火災 |
|
平成4年 |
923 |
77 |
524 |
318 |
1,447 |
395 |
92.3 |
7.7 |
62.2 |
37.8 |
78.6 |
21.4 |
|
平成5年 |
983 |
83 |
503 |
246 |
1,486 |
329 |
92.2 |
7.8 |
67.2 |
32.8 |
81.9 |
18.1 |
|
平成6年 |
816 |
143 |
484 |
221 |
1,300 |
364 |
85.1 |
14.9 |
68.7 |
31.3 |
78.1 |
21.9 |
|
平成7年 |
2,126 |
111 |
479 |
213 |
2,605 |
324 |
(873) |
(93) |
(454) |
(211) |
(1,327) |
(304) |
|
95.0 |
5.0 |
69.2 |
30.8 |
88.9 |
11.1 |
|
(90.4) |
(9.6) |
(68.3) |
(31.7) |
(81.4) |
(18.6) |
|
平成8年 |
938 |
104 |
484 |
225 |
1,422 |
329 |
90.0 |
10.0 |
68.3 |
31.7 |
81.2 |
18.8 |
注) 1 各欄の上段は件数、下段は構成比(%)を示す。
2 平成7 年の( )内の数値は阪神・淡路大震災による事故を除いたものである。
(2) 事故の発生場所別件数
ガス事故の約8 割が消費先で発生し、そのうちの多くは住宅で発生発生件数を発生場所別にみると第3図のとおりである。消費先におけるものが76.3%、ガス導管におけるものが22.2%となっている。
ガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費先におけるものが68.4%、ガス導管におけるものが31.6%であるのに対し、液化石油ガスでは消費先におけるものが87.9%、ガス導管におけるものが8.3%、容器による運搬中のものが2.5%である。また、消費先における事故の多くは住宅において発生している。
(3) 消費先における事故の発生原因別件数
消費者に係る原因が約6割
ガス事故の発生原因は第4図のとおりで、消費者に係る割合が57.9%を占めている。
ガスの種別ごとにみると、発生原因が消費者に係る場合が都市ガスでは60.6%、液化石油ガスでは54.9%となっている。
依然多い消費者の不注意による事故
平成4年からの消費先における発生原因別の発生状況(平成7年は大震災によるものを除く)をみると第3表のとおりである。年々減少傾向にあった件数は、平成8 年は前年に比べ61件(4.8%)増加したが、平成4年と比べると108件(7.5%)の減少となっている。
消費者に係る原因のうち不注意によるものの占める割合は依然高く、平成8 年では消費先における事故の48.5%を占めている。
第3表 消費先における発生原因別発生状況の推移(平成8年中)
原因 年 |
消費者に係る原因 |
ガス事業者・工事業者に係る原因 |
その他 |
計 |
|
|
不注意によるもの |
||||
平成4年 |
1,025 (71.0) |
775 (53.7) |
160 (11.1) |
259 (17.9) |
1,444 (100.0) |
平成5年 |
942 (66.5) |
706 (49.8) |
166 (11.7) |
309 (21.8) |
1,417 (100.0) |
平成6年 |
848 (64.4) |
662 (50.3) |
148 (11.2) |
320 (24.3) |
1,316 (100.0) |
平成7年 |
698 (54.7) |
567 (44.5) |
194 (15.2) |
383 (30.0) |
1,275 (100.0) |
平成8年 |
774 (57.9) |
648 (48.5) |
185 (13.8) |
377 (28.2) |
1,336 (100.0) |
注) 1 消費者に係る原因のうち「不注意によるもの」とは、コックの誤操作又は火の立ち消え等による生ガスの放出、器具・ホースの取扱い不良等によるもので、内数である。
2 各欄の( )内の数値は構成比(%)を示す。
3 平成7年は、阪神・淡路大震災によるものを除く。
2 ガス事故による死傷者
死者数は増加、負傷者数は減少
平成8年中に発生したガス事故による死傷者数(平成7年は大震災によるものを除く)は第4表のとおりである。
ガス事故による死者は36人で前年に比べ4人(12.5%)の増加、負傷者は354人で前年に比べ65人(15.5%)の減少となっている。
ガスの種別ごとにみると、死者は、都市ガスによるものが22人で前年と同数、液化石油ガスによるものが14人で前年に比べ4人(40.0%)の増加となっている。負傷者は、都市ガスによるものが136人で前年に比べ51人(27.3%)の減少、液化石油ガスによるものが218人で前年に比べ14人(6.0%)の減少となっている。
第4表 平成8年中のガス事故による死傷者数
年・増減 \ 区分 |
平成8年 (イ) |
平成7年 (ロ) |
増減 (イ)-(ロ) (ハ) |
増減率 (ハ)/(ロ)×100 (%) |
|
死者数 |
都市ガス |
22 |
22 |
0 |
0.0 |
液化石油ガス |
14 |
10 |
4 |
40.0 |
|
計 |
36 |
32 |
4 |
12.5 |
|
負傷者数 |
都市ガス |
136 |
187 |
-51 |
-27.3 |
液化石油ガス |
218 |
232 |
-14 |
-6.0 |
|
計 |
354 |
419 |
-65 |
-15.5 |
注) 平成7年の死傷者数は、阪神・淡路大震災によるものを除く。
死傷者数は5年間で減少傾向
平成4年からの死傷者数(平成7年は大震災によるものを除く)の推移をみると死者、負傷者ともに減少傾向にあり、平成8年は、それぞれ平成4 年の66.7%、68.5%となっている
死者は漏えい事故によるものが75%
死傷者を態様別にみると第6図のとおりである。死者数では、漏えい事故によるものが75.0%、爆発・火災事故によるものが25.0%と漏洩事故が多数を占めているが、負傷者数では、漏えい事故によるものが32.5%、爆発・火災事故によるものが67.5%となっている。
なお、発生場所別にみると、死者及び負傷者の87.9%が消費先における事故によるものである。
3 自損行為によるガス事故
死者の75%は自損行為
ガス事故のうち、自損行為に起因する事故は第7図のとおりである。件数は110件で、これらの事故による死者は27人、負傷者は72人で、ガス事故全体に占める自損行為に係る事故の割合は6.3%、また、死者、負傷者はそれぞれ75.0%、20.3%である。
4 まとめ
大震災によるものを除くガス事故の総件数は年々減少していたが、平成8年は増加に転じた。
ガス事故の約8割は漏えい事故で、残りの約2割が爆発・火災事故である。これは、過去5年間同様の傾向を示している。また、ガス事故の約8割は消費先において発生しており、そのうちの約6割は消費者に係る原因によるものである。
死傷者については、前年に比べ負傷者は減少したものの、死者は増加した。また、過去5年間をみると死者、負傷者とも減少傾向にあり、平成4年に比べ、ともに約3割減少している。なお、死者のうち75%は自損行為によるものである。
平成8年中の毒劇物等による事故の概要
1 毒劇物等による事故の発生状況
(1) 事故の発生件数
発生件数は前年に比べ約2割減少
平成8年中に発生した毒劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの件数は第5表のとおりである。
事故件数は46件で、前年に比べ10件(17.9%)の減少となっている。また死者は4人で前年に比べ3人(300.0%)の増加、負傷者は30人で前年に比べ71人(70.3%)の減少となっている。
第5表 平成8年中の毒劇物等による事故発生件数
年・増減 \ 区分 |
平成8年 (イ) |
平成7年 (ロ) |
増減 (イ)-(ロ) (ハ) |
増減率 (ハ)/(ロ)×100 (%) |
|
事故件数(件) |
46 |
56 |
-10 |
-17.9 |
|
|
火災 |
4 |
8 |
-4 |
-50.0 |
|
漏出 |
28 |
31 |
-3 |
-9.7 |
|
その他 |
14 |
17 |
-3 |
-17.6 |
死傷者数(人) |
34 |
102 |
-68 |
-66.7 |
|
|
死者 |
4 |
1 |
3 |
300.0 |
|
負傷者 |
30 |
101 |
-71 |
-70.3 |
注) 「サリン」は、上記「毒劇物等」の定義に入らないため、平成7年に発生したいわゆる「地下鉄サリン事件」等の被害は含まれない。
(2) 毒劇物等の内訳
平成8年中の事故の毒劇物等の内訳をみると、第8図のとおりである。塩素が8件(17.4%)、アンモニアが7件(15.2%)、クロルピクリンが6 件(13.0%)、水酸化ナトリウムが4件(8.7%)、硫酸、クレゾールがそれぞれ3件(6.5%)、塩酸、硫化水素がそれぞれ2件(4.3%)となっている。
2 圧縮アセチレンガス等貯蔵取扱いについて消防機関に届出を要する物質に係る火災の状況
(1) 火災の発生件数
発生件数は前年に比べ大幅に減少
平成8年中に発生した圧縮アセチレン等貯蔵取扱いについて消防機関に届出を要する物質(以下「圧縮アセチレンガス等届出物質」という。)に係る火災の発生件数は第6表のとおりである。
火災の発生件数は50件で、前年に比べ23件(31.5%)の減少となっている。また、死者は1人で前年に比べ1人(50.0%)の減少、負傷者は40 人で前年に比べ7 人(14.9%)の減少となっている。
第6表 平成8年中の圧縮アセチレンガス等届出物質に係る火災件数
年・増減 \ 区分 |
平成8年 (イ) |
平成7年 (ロ) |
増減 (イ)-(ロ) (ハ) |
増減率 (ハ)/(ロ)×100 (%) |
火災件数(件) |
50 |
73 |
-23 |
-31.5 |
死者(人) |
1 |
2 |
-1 |
-50.0 |
負傷者(人) |
40 |
47 |
-7 |
-14.9 |
(2) 圧縮アセチレンガス等届出物質の内訳
平成8年中の火災の圧縮アセチレンガス等届出物質の内訳をみると、第9図のとおりである。液化石油ガスに係る火災が28件(56.0%)、圧縮アセチレンガスに係る火災が20件(40.0%)、生石灰及び劇物に係る火災がそれぞれ1件(2.0%)となっている。