消防危第35号
平成9年3月26日
各都道府県消防主管部長 殿
消防庁危険物規制課長
製造所等の設置又は変更の許可に係る手続等の簡素合理化について
製造所等の設置又は変更の許可に係る手続については、危険物の規制に関する規則に基づき、「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令の施行について」(昭和61年12月26日付け消防危第119号)及び「保安四法共管競合事項等の改善措置等について」(平成元年8月31日付け消防危第81号)により運用されているところである。
今般、製造所等の安全性の確保を前提に、行政事務の更なる簡素合理化を図るため、許可申請における添付書類の明確化及び完成検査における自主検査結果の活用について下記のとおり定めた。今後、製造所等の設置又は変更の許可に係る手続等の運用については、本趣旨に則り簡素合理化を図るよう運用されるとともに、貴管下市町村に対してその旨示達され、よろしくご指導願いたい。
記
第1 申請書等の添付書類
1 設置(変更)許可申請(規則第4条及び第5条関係)
(1) 基本的事項
設置(変更)許可申請の審査は、製造所等の位置、構造及び設備が技術上の基準に適合していること並びに当該製造所等における危険物の貯蔵又は取扱いが公共の安全の維持又は災害の発生防止に支障を及ぼすおそれがないことを確認するものであり、以下を踏まえ、申請書等の添付書類は、審査に当たって必要事項が確認できる最小限のものとすること。
ア 大型製造プラント等で多数の機器、配管等が設置される施設にあっては、申請者との事前の協議を踏まえ、個別の記載ではなく、工程の概要を示す図(以下「フロー図」という。)等を活用したものとすること。
イ 複数施設で共用する配管、消火設備、防油堤等は、代表タンク等の一の施設で申請するものとし、他の施設においては、それぞれの施設の付属とされる引き込み配管、放出口等について申請するものであること。
ウ 変更許可申請においては、変更に係る範囲又は設備の位置を記載した配置図及び変更に係る部分の図書を添付させるものとし、その他の図書の添付は要しないものであること。
エ 危険物の規制に関する政令(以下「政令」という。)第23条の規定の適用を受ける設備については、申請者と添付図書について協議すること。
オ 許可申請書には工事中の安全対策に係る図書等の添付は要しないものであること。なお、仮使用のある場合は、2により行うこと。
カ 特定屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所以外の製造所等の許可申請書については、工事計画書及び工事工程表の添付は要さないものであること。
(2) 添付書類の内容
規則第4条第2項及び第5条第2項の位置、構造及び設備に関する図面並びに第4条第3項及び第5条第3項の添付書類の標準的な記載内容は次に示すとおりである。
なお、審査に必要な事項は、製造所等の形態、規模、申請内容等により異なるため、製造所等の安全性等を確認できる場合は、これにかかわらず更に簡略化することができるものであること。
また、これらの書類は、設計又は施工のために作成したもの等を活用することでも差し支えないものであること。
ア 規則第4条第2項第1号及び第2号並びに第5条第2項第1号及び第2号関係(当該製造所等を含む事業所内の主要な建築物その他の工作物の配置、当該製造所等の周囲の状況)
建築物その他の工作物と周囲の保安対象物件の状況が示された図面及び保有空地の範囲が示された図面(複数枚であっても構わない。以下「配置図」という。)が添付され、審査上で必要な距離等が記載されていること。ただし、保安距離については、配置図にそれぞれの保安対象物件からの距離が規定値以上であることが明確な場合、その旨を記載することにより距離を図示しないことができること。
イ 規則第4条第2項第3号及び第4号並びに第5条第2項第3号及び第4号関係(当該製造所を構成する建築物その他の工作物及び機械器具その他の設備の配置並びに当該製造所等において危険物を貯蔵し、又は取り扱う建築物その他の工作物及び機械器具その他の設備の構造)
(ア) 建築物
平面図(建築物等内の設備等の配置を示したもの。以下同じ。)、立面図(四面。以下同じ。)及び断面図(代表的な断面。以下同じ。)を添付すること。
a 主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根等)については、平面図等に構造等を記載すること。主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造る場合で建設大臣の認定品を使用するときは、現場施工によるものを除き、認定番号を記載すれば、別途構造図の添付を要さないこと。
b 窓及び出入口については、平面図等に位置、寸法、構造等を記載すること。窓又は出入口の防火戸等で建設大臣の認定品を使用する場合は、認定番号を記載すれば、別途構造図の添付を要さないこと。
c 排水溝、ためます等については、平面図に位置及び寸法を記載することにより、別途構造図の添付を要さないこと。
(イ) 工作物(建築物に類似する架構等)、防火塀、隔壁等
工作物にあっては架構図(架構等の姿図)及び構造図を、防火塀、隔壁等にあっては位置を示した平面図及び構造図を添付すること。
(ウ) タンク、塔槽類、危険物取扱設備等
タンク、塔槽類、危険物取扱設備等(以下「タンク等」という。)については、構造図を添付すること。ただし、小規模な危険物取扱設備等については、配置図等に位置、材質等を記載することにより、別途構造図の添付を要さないものであること。
a タンク等の支柱等については、上記の構造図に支柱等の構造等を記載することにより別途構造図の添付を要さないこと。
b 液面計等の附属設備については、上記の構造図に取付位置、材質等を記載することにより別途構造図の添付を要さないこと。
(エ) 計装機器等
計装機器等(危険物の取扱いを計測又は制御するための機器をいう。以下同じ。)は、配置図等に位置、機能等を記載することにより、別途構造図の添付を要さないこと。
なお、大型製造プラント等、多数の設備を設置する施設においては、フロー図等に計装機器等の概要を記載することによることができること。
(オ) 危険物取扱設備と関連のある非対象設備等
危険物取扱設備と関連のある(危険物の貯蔵又は取扱い上安全性に影響するものをいう。)非対象設備及び危険範囲(可燃性蒸気が漏れ又は滞留し、何らかの点火源により爆発等のおそれのある範囲をいう。以下同じ。)にある危険物取扱設備と関連のない非対象設備は、配置図等に名称、防爆構造(防爆対策を含む。)等を記載することにより、別途構造図の添付を要さないこと。
なお、大型製造プラント等で多数の設備を設置する施設においては、フロー図等に設備等の設置条件(材質、防爆構造等)を記載することによることができる。
(カ) 危険物取扱設備と関連のない非対象設備
危険物取扱設備と関連のない(危険物の貯蔵又は取扱い上安全性に影響しないものをいう。)非対象設備で危険範囲にないものは、配置図等に名称を記載することにより、別途構造図等の添付を要さないこと。
なお、大型製造プラント等、多数の設備を設置する施設においては、フロー図等に設備等の設置条件(位置等)を記載することとすることができる。
(キ) 地上配管
a 製造所及び一般取扱所の地上配管は、多数の配管を設置する施設の場合、フロー図等に、材質、口径等を記載することにより、配置図等の配管ルート等の記載を省略することができること。ただし、保有空地内に敷設する配管については、bの施設範囲外に敷設する地上配管の例によること。
b 製造所及び一般取扱所以外の危険物施設並びに製造所等の施設範囲外に敷設する地上配管は、配管ルートを配置図等に記載すること。敷設断面、配管支持物(耐火措置を含む。以下同じ。)等については、一定箇所ごとの断面、構造等の状況を配置図等に記載することにより、別途構造図の添付を要さないこと。
なお、大型製造プラント等においては、フロー図等に、設置に係る設計条件(保有空地、他の施設等の通過状況、構内道路の横断状況、配管支持物の状況等)を記載することにより、配管ルート等の記載を省略することができる。
(ク) 地下配管
配管ルートを配置図等に記載すること。敷設断面、腐食防止措置(電気防食措置の場合にあっては、位置及び構造)については、一定箇所ごとの断面、敷設状況を配置図等に記載することにより、別途構造図の添付を要さないこと。
(ケ) 構造計算書等
計算のための諸条件、計算式及び計算結果のみを記載したものとすることができること。
ウ 規則第4条第2項第5号及び第5条第2項第5号関係(製造所等に設ける電気設備、避雷設備並びに消火設備、警報設備及び避難設備の概要)
(ア) 危険範囲の電気設備
電気設備については、配置図等に位置、防爆構造記号等を記載することにより、別途構造図の添付を要さないこと。電気配線については、各配線系統のルート及び構造(施工方法等)を配置図等に記載すること。
(イ) 危険範囲外の電気設備
電気設備の記載は要さないこと。電気配線については、配置図等へ主電源等から危険範囲に至る主配線のルートのみを記載することとし、その他の電気配線のルートについては、記載を要さないこと。
エ 規則第4条第2項第6号及び第5条第2項第6号関係(緊急時対策に係る機械器具その他の設備)
イ(エ)計装機器等の例によること。
オ 規則第4条第3項第1号及び第5条第3項第1号関係(製造所等に係る構造及び設備明細書)
設備、機器等を多数設置する場合は、設備、機器等のリストを別紙として添付することができること。また、構造設備明細書に記載すべき事項のうち、図面中に記載したものについては、構造設備明細書への記載を省略することができること。
カ 規則第4条第3項第2号及び第3号並びに第5条第3項第2号及び第3号関係(第1種、第2種又は第3種の消火設備の設計書、火災報知設備の設計書)
設計書の計算書については、計算のための諸条件、計算式及び計算結果のみを記載した計算書とすることができること。
2 仮使用承認申請(規則第5条の2関係)
仮使用承認申請書の添付書類は、変更の工事に際して講ずる火災予防上の措置について記載した書類とされているが、これは以下の図書とし、変更許可申請書に添付した書類の重複添付は要さないこと。
ア 仮使用の承認を受ける範囲の示された図面
イ 仮使用時における工事計画書、工事工程表、安全対策等に関する図書
なお、イの工事工程表には、工程毎の詳細を示す必要はなく、工事工程の重なり等により安全性が低下しないことを確認できるもので足りること。(例えば、消火設備の配管等のつなぎ込み等により一時的に消火設備等が使用不能となる等、別途安全対策を講ずる必要性の有無を確認するためのもの。)
3 完成検査前検査申請(規則第6条の4関係)
完成検査前検査申請書の添付書類は、完成検査前検査を実施する行政庁が許可行政庁と同一の場合は不要であること。この場合において、製造所又は一般取扱所で複数の20号タンクの新設又は変更の工事が行われる場合は、完成検査前検査申請書の「その他必要な事項」の欄に検査対象の20号タンクが明確に特定できるよう記載すること。
なお、完成検査前検査を実施する行政庁が許可行政庁と異なる場合は、構造明細図書の写しを添付すること。
4 完成検査申請(規則第6条関係)
完成検査申請書には添付図書は要さないものとする。(「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の施行について」(昭和57年1月19日付け消防危第10号)第2、2及び3を変更する。)
第2 完成検査
完成検査の方法及び完成検査時の工事用架台等の取扱いについては、次によること。
1 完成検査の方法
(1) 基本的事項
完成検査の際には、設置者が事前に実施した自主検査結果等を活用することができるものであること。自主検査結果等の活用にあたっては、市町村長等と申請者とは、あらかじめ完成検査において自主検査結果等により確認する事項について、十分調整する必要がある。なお、工事中に市町村長等の立会い等により確認された事項については、当然のことながら完成検査時に改めて確認を要さないものであること。なお、完成検査申請書に(2)に示す自主検査結果報告書等の添付は要さないものであり、完成検査時に検査員が現地で確認すれば足りるものであること。
(2) 自主検査結果の活用の内容
自主検査結果の活用方法については、次に示すとおりとすること。なお、これ以外の事項であっても、市町村長等の判断により活用することができるものであること。
ア 位置、構造及び設備(消火設備等を除く。)に係る事項
設置者等の自主検査結果報告書、自主検査結果データ、施工管理記録、施工記録写真、製造者の検査結果証明書(ミルシート)、検査記録写真等を活用することができること。なお、これらのすべてを必要とするものではなく、技術上の基準の適合状況が確認できる必要最小限のものとすること。
イ 消火設備に係る事項
製造者の検査成績証明書、設置者の検査記録写真、消防用設備等試験結果報告書等を活用することができること。なお、工事規模等ごとの完成検査事項等については、次のとおりとすること。
(ア) 工事規模等ごとの消火設備の完成検査事項
技術上の基準の適合状況の確認のための性能試験等は、工事規模等により次のとおりとするが、市町村長等と申請者間において、適用する性能試験等についてあらかじめ十分調整しておくことが必要であること。
a 設置及び大規模な変更工事
新規の設置工事又は大規模な変更工事においては、原則として消火薬剤の放出試験を行うこと。
b 中規模な変更工事
中規模な変更工事(a及びc以外)においては、原則としてcに掲げる事項及び通水等の試験を行うこととし、消火薬剤の放出試験を省略することができること。
c 小規模な変更工事
放出口、附属設備、配管等の取替え又は配管の小規模なルート変更等の変更工事においては、外観、仕様等について確認することとし、消火薬剤の放出試験及び通水等の試験を省略することができること。
(イ) 消防用設備等試験結果報告書に該当項目のないものの取扱い
泡消火設備の泡チャンバー、泡モニター等で消防用設備等試験結果報告書の欄に明記されていない泡放出口の機器については、当該報告書中の「ア 外観試験の泡放出口の機器の泡ヘッドの欄」、「ウ 総合試験の泡放射試験(低発泡のものによる)の固定式の欄」、「備考の欄」等を用いて記載するものとすること。
ウ 警報設備及び避難設備に係る事項
検査記録写真、消防用設備等試験結果報告書等を活用することができること。
2 完成検査時における工事用架台等の取扱い
完成検査時には、試運転等に備え工事用架台等を残置する必要がある場合があることを踏まえ、これに関しては以下の取扱いとすること。
(1) 保有空地内の工事用事務所及び工事用資機材
保有空地内に設けた工事用事務所及び保有空地内に置かれた工事用資機材については、完成検査時には撤去されている必要があること。
(2) 完成検査後の試運転用工事架台等
完成検査後の試運転時のメインテナンス及び監視等の確認上必要となる工事用架台等は、完成検査時において設置されていてもやむを得ないものであるが、完成検査時に撤去予定を確認しておくこと。