消防危第83号

昭和63年6月25日

各都道府県消防主管部長 殿

消防庁危険物規制課長

 

金属製のドラムに係る試験について

 

危険物の規制に関する規則(以下「規則」という。)及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(以下「告示」という。)が昭和621226日に改正され、危険物を運搬するための運搬容器又は外装として用いられる鋼製ドラム、アルミニウム製ドラム、金属製ドラム及びステンレス鋼製ドラム(以下「金属製のドラム」という。)が有すべき性能が定められたところであるが、これに係る試験の細目を下記のとおり定めたので、その運用に遺憾のないよう配慮されるとともに、貴管下市町村に対してもこの旨示達され、よろしく御指導頭いたい。

なお、危険物保安技術協会では、金属製のドラムが有すべき性能に関する試験確認を実施し、基準に適合するものについてはその旨の表示(別紙参照)を行うこととしている。

この制度は、危険物を運搬する者の行う容器が必要な性能を有するか否かの判断を容易なものとするとともに、消防機関の行う立入検査の一助となるものと考えるので、この試験確認制度を活用して指導等にあたられるようお願いする。

 

 

「金層製のドラムに係る試験細目」

 

規則別表第3備考1(1)から(4)までに規定する試験の実施方法及び性能の確認は、次のとおりとすること。

 

1 落下試験

(1) 実施方法

ア 危険物の収納

収納する危険物が液体である場合には容器の内容積の98%以上、固体である場合には容器の内容積の95%以上収納すること。

なお、危険物の運搬容器の外装として用いられる金属製のドラムである場合には、危険物を収納した運搬容器をその内部に入れた状態で試験を行うこと。

イ 代替物質を用いる場合

実際に収納する危険物を用いて実施することを原則とするが、代替物質として、当該危険物と同等の物理的性状を有する物質又は水を用いて実施してもさしつかえないものであること。

代替物質を用いる場合、落下高さは、次に掲げる高さ以上とすること。

() 固体又は液体である危険物の代替物質として同等の物理的性状を有するものを用いる場合

(省略)

() 液体である危険物の代替物質として水を用いる場合

a 収納する危険物の比重が1.2以下の場合

(省略)

b 収納する危険物の比重が1.2を超える場合

(省略)

ウ 落下方法

次の()及び()に示す方法で落下させること。

この場合、いずれも落下面に対し衝撃点の垂直上方に重心があるようにして行うこと。

() チャイム(天板又は地板と胴板との接合部をいう。)又はチャイムがない金属製のドラムにあつては円周の接合部が衝撃点となる対角落下

() ()とは異なる最も弱いと考えられる部分が衝撃点となる落下(一般的な円筒形のものにあつては、胴板溶接部が衝撃点となる水平落下)また、金属製のドラムを落下させる面は、コンクリート舗装面等硬く平滑な水平面とすること。

(2) 性能の確認

ア 液体の危険物を収納する運搬容器又は液体の危険物を収納する運搬容器の外装として用いられる金属製のドラムの場合

落下直後に金属製のドラムの内圧と外圧を平衡にした後、5分間放置し、運搬容器からの内容物の漏れがないこと。

ただし、内容積200L以上の金属製のドラムのうち、胴板、天板及び地板のいずれも1.2m未満の金属製のドラム以外のものについては、当分の間、落下後5分間放置し、運搬容器からの内容物の漏れがないことにより確認してさしつかえないこと。

なお、いずれの場合も、落下衝撃時に、口栓(天板取外し式の金属製のドラムにおいては、バンド部)から少量の漏れがあつても、その後漏れがなければ、これを漏れとはみなさないこと。

イ 固体の危険物を収納する運搬容器又は固体の危険物を収納する運搬容器の外装として用いられる金属製のドラムの場合運搬容器からの内容物の漏れがないこと。

 

2 気密試験

(1) 実施方法

ア 圧力保持時間

1分間以上とすること。

イ 口栓付きの場合

金属製のドラムにガス抜き口栓が付いている場合には、ガス抜き口を密封するか又はガス抜き口のない口栓に取り替えて実施すること。

(2) 性能の確認

漏れを生じないことを次のいずれかの方法により確認すること。

ア 金属製のドラムを水中に沈める方法

イ 金属製のドラムの表面に石鹸水を塗布する方法

ウ これらと同等以上の有効な方法

 

3 内圧試験

(1) 実施方法

ア 加圧方法

加圧方法としては水を用いることが適当であること。

なお、圧力は、連続的に、かつ、均一に加え、試験中一定の値としなければならないこと。

イ 金属製のドラムの置き方

金属製のドラムは、その最も弱いと考えられる部分を上部に向けて置くこと。

ウ 圧力次の()及び()の区分に応じ、それぞれa又はbに掲げる圧力のうち、高い方の圧力とすること。

なお、a又はbのいずれの圧力が高いかは個々の危険物により決まるものであるが、一般的にはaよりもbの方の圧力が高いものであること。

() 区分Ⅰの危険物を収納するもの

a 収納する危険物の55℃における蒸気圧の1.15倍の圧力から1.0kgf/cm2を減じた圧力

b 2.6kgf/cm2の圧力

() 区分Ⅱ又はⅢの危険物を収納するもの

a 収納する危険物の55℃における蒸気圧の1.5倍の圧力から1.0kgf/cm2を減じた圧力

b 1.0kgf/cm2の圧力

エ 圧力保持時間

5分間以上とすること。

ただし、内容器付きのものにあつては、30分間以上とすること。

オ 口栓付きのもの

金属製のドラムにガス抜き口栓が付いている場合には、ガス抜き口を密封するか又はガス抜き口のない口栓に取り替えて実施すること。

(2) 性能の確認

漏れを生じないことを確認すること。

 

4 積み重ね試験

(1) 実施方法

ア 危険物の収納

() 収納する物質が液体である場合には容器の内容積の98%以上、固体である場合には容器の内容積の95%以上収納すること。

なお、危険物の運搬容器の外装として用いられる金属製のドラムである場合には、危険物を収納した運搬容器をその内部に入れた状態で試験を行うこと。

() 実際に収納する危険物を用いて実施することを原則とするが、危険物の代替物質として水等を用いて試験を行つてもさしつかえないものであること。

イ 載荷方法

次式より求められる荷重を機械的に加えること。

W=w×N

ここで W:上部に加えるべき荷重(kg)

w:金属製のドラム(収納物を含む。)の荷重(kg)

N:3/h-1(ただし、小数点第一位以下は切り上げる。)

h:金属製のドラムの高さ()

(2) 性能の確認

内容物の漏れ又は運搬の安全を損なうおそれのある変形を生じていないことを確認すること。

この場合において、運搬の安全を損なうおそれのある変形とは、危険物を収納した2個の同型の金属製のドラムをその上面に積み重ねたとき、その状態を1時間保つことができない変形をいうものであること。

 

別紙

 

試験確認結果の表示

 

次の1及び2の表示を行う。

 

1 天板表示又は胴板表示

天板又は胴板(塗料、ワニス又は接着剤を収納する鋼製ドラム(天板取外し式のもの)にあつては、胴板)に次のものを刷り込み等により表示する。

(1) 収納する危険物の状態及び区分並びに再生されたものである場合又は運搬容器の外装として用いられるものである場合にはその旨の表示(注1)

(2) 収納する危険物の最大比重及び試験内圧(注2)

(3) 危険物保安技術協会(KHK)マーク

(4) 確認工場番号又は一連番号

(表示例)

ア 新たに製造されたものの場合

() 運搬容器として用いられるもの(省略)

() 外装として用いられるもの(省略)

() 塗料、ワニス又は接着剤を収納する鋼製ドラム(天板取外し式もの)(省略)

イ 再生されたものの場合(省略)

 

2 地板表示

地板に次のものを打刻により表示する。

(1) 収納する危険物の状態及び区分並びに運搬容器の外装として用いられるものである場合にはその旨の表示(注4)

(2) 収納する危険物の最大比重及び試験内圧(注2)(注5)

(表示例) (内容は1の表示例参照)

() 運搬容器として用いられるもの

「LX」及び「1.6-3.0

() 外装として用いられるもの

「LXC()」及び「1.2-2.6

() 塗料、ワニス又は接着剤を収納する鋼製ドラム(天板取外し式もの)

「LX」及び「2.0-N」

 

(注1) 収納する危険物の区分は、本文中記1()に定める区分をいう。

(注2) 当分の間、収納する危険物の最大比重が1.2であり、かつ、試験内圧が2.6kgf/cm2である場合には表示を行わない。

(3) 「C()」は運搬容器がプラスチックびん又はプラスチック容器であることを、「C()」は運搬容器がガラスびんであることを表す。

(注4) 地板には、再生されたものである旨の表示は行わない。

(注5) 塗料、ワニス又は接着剤を収納する鋼製ドラム(天板取外し式もの)にあつては、当分の間、収納する危険物の最大比重が1.2である場合には表示を行わない。

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